「ゾゾスーツ=失敗」と考える人によくある盲点 アマゾンも「このトレンド」を模索している
成功の2つめの背景にあるのは、衣邦人が構築した「採寸師」というシステムだ。
採寸師とは、いわば出張計測サービスで、消費者がアプリ経由で計測を申し込むと、同社が抱える採寸師が消費者のもとを訪れ、サイズを計測するというものだ。
マス・カスタマイゼーションにおいて、採寸・計測は乗り越える必要のある高いハードルだ。実際、各社スマートフォンのアプリや「ゾゾスーツ」のように技術を駆使しつつ、試行錯誤でデファクトスタンダード(技術標準)の構築に取り組んでいる。
その領域を「人海戦術」であっさり乗り越えてしまうあたりが、中国企業らしいユニークな発想だ。顧客体験としては、実際に採寸してもらったほうが安心感があるし、満足度も高いという人が多いだろう。
まさに、「衣邦人」は、人とテクノロジーを組み合わせた価値創造の好事例である。
これまで、カスタマイズが必要な「受注生産」は、設計や生産に人手がかかるため必然的に高コストとなり、低価格でマスに展開することは難しかった。オーダーメイドと聞くと、何となく高そうなイメージをもつことからもわかるだろう。
だが、「衣邦人」のほかにも、テクノロジーを活用した多くの企業が、この常識を覆そうとしている。
アマゾンも模索する「マス・カスタマイゼーション」
この分野の草分けとしては、島精機製作所の自動編機「ホールガーメント」が有名だ。同社は80年代からコンピューターデザインおよびコンピューター制御に力を入れ、さまざまな製品を開発してきた。
同社のホールガーメントがあれば、1台でセーターやジャケットなど、さまざまなニットウェアの自動生産が可能となる。サイズ・素材・色など、消費者の要望に合わせた製品を連続で生産することも可能だ。最近では、ユニクロも同社と組んで、ホールガーメントのニットを積極展開している。
また最近、スーツでの浸透が顕著だ。一昔前まではスーツのオーダーメイドは中価格帯以上が一般的であったが、最近は低価格でも気軽に楽しめるようになった。
代表例は、オンワード樫山が手がける「カシヤマ ザ・スマートテーラー」だ。価格は3万円から、納期は最短1週間と短く、消費者の支持を広く集めている。
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