日本は、なぜホルムズ海峡で標的になったのか 安倍首相の米・イラン仲介外交は台なしに

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残る疑問として、日本のタンカーが意図的に狙われたかどうかという点がある。テロ組織やゲリラ組織は、最大限のインパクトを狙うという特徴がある。革命防衛隊は軍隊とも言える組織だが、原油相場を高騰させて国際社会を揺さぶりたいという意味では、今回の攻撃は周到に計画されたものと考えることができるだろう。

革命防衛隊は船舶の通信を傍受したり、船舶の位置情報を公開するサイト「マリントラフィック」をチェックしたりしていることは十分に考えられ、安倍首相の歴史的なイラン訪問で国際メディアも注目する中、日本のタンカーが意図的に狙われた可能性はある。

安倍首相の「トランプ贔屓」イランでも有名

仮に今回のタンカー攻撃が革命防衛隊による犯行とするなら、日本に対する強烈なメッセージになるだろう。イランは親日的な国だが、アメリカのトランプ大統領寄りの安倍首相の立場はイラン国内でも有名だ。

そもそも、国際社会が苦労してまとめ上げた核合意から一方的に離脱したのはトランプ大統領であり、イランはみずからに非はなく、喧嘩を売られたと感じている。イランとしては、日本政府はトランプ大統領の意向を受けてイランを説得するのではなく、みずからの意向をトランプ大統領に伝えるべきだという立場だろう。

安倍首相は「事態のエスカレートは望んでいない」というトランプ氏のメッセージをハメネイ師に伝えたが、同師は安倍首相との会談後、「イランはアメリカを信用しない」とツイートしており、イラン側から歩み寄る考えはなさそうだ。

ハメネイ氏も権力の座にとどまるためには、保守強硬派に寄り添う必要がある。一連のタンカー攻撃はイランによる犯行の可能性が高いと考えるが、時に陰謀や謀略によって国際政治が動いてきたという史実もあり、ホルムズ海峡周辺での不穏な動きは収まりそうにない。

池滝 和秀 ジャーナリスト、中東料理研究家

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いけたき かずひで / Kazuhide Iketaki

時事通信社入社。外信部、エルサレム特派員として第2次インティファーダ(パレスチナ民衆蜂起)やイラク戦争を取材、カイロ特派員として民衆蜂起「アラブの春」で混乱する中東各国を回ったほか、シリア内戦の現場にも入った。外信部デスクを経て退社後、エジプトにアラビア語留学。ロンドン大学東洋アフリカ研究学院修士課程(中東政治専攻)修了。中東や欧州、アフリカなどに出張、旅行した際に各地で食べ歩く。現在は外国通信社日本語サイトの編集に従事している。

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