日本は、なぜホルムズ海峡で標的になったのか

安倍首相の米・イラン仲介外交は台なしに

これに対し、イランの国連代表部は「アメリカの根拠なき主張を断固として認めない」と反発。ザリフ外相もツイッターで、「ハメネイ師と安倍首相が包括的かつ友好的な会談を行っているさなかに起きた」とし、イランは関与していないと主張した。両者の主張は真っ向から対立しており、安倍首相の仲介外交の努力は台なしになった格好だ。

筆者もイランの犯行と決め付ける材料は持ち合わせていないが、イランによる犯行の可能性が高いのではないかと考えている。タンカーが攻撃を受けたのは、イラン沖約50キロの海域で、近くにはイラン南部ジャスク港がある。革命防衛隊は、多数の小型高速艇を配備し、ホルムズ海峡付近の海域を熟知している。5月にUAE沖で起きたタンカー攻撃とは異なり、今回の事件は、いわば革命防衛隊の「縄張り」ともいえる海域で起きている。

根強い「陰謀論」説

一方で、アメリカとイランの軍事衝突を引き起こすのを望む勢力による謀略説もある。革命防衛隊系のファルス通信は、アメリカの軍事行動を引き出し、対イランでオマーンやパキスタンの支援を得るためにUAEの諜報機関が日本のタンカー攻撃に関与したとのサウジ人専門家の見方を伝えた。

ザリフ外相もツイッターで、アメリカのイラン犯行説は、アメリカのボルトン大統領補佐官(国家安全保障担当)やイスラエルのネタニヤフ首相、サウジアラビアのムハンマド皇太子、UAEのムハンマド皇太子という「Bチーム」による「妨害外交」の一環だとして、アメリカとイランの戦争を望む勢力の陰謀だと示唆した。

確かに、「Bチーム」はアメリカとの軍事衝突でイランが弱体化するのを望んでいる。サウジは革命防衛隊が支援するイエメンのシーア派系武装組織フーシ派の攻撃に手を焼いており、12日にもサウジ南西部のアブハ空港に巡行ミサイル攻撃があり、子供を含む民間人26人が負傷した。イスラエルもイランの核開発活動を強く警戒しており、みずから手を下さなくて済むためにアメリカのイラン攻撃を切望する声がある。

ただ、謀略説を簡単に受け入れるわけにはいかない。昨年10月のサウジ人ジャーナリスト、ジャマル・カショギ氏殺害事件で痛手を負ったサウジのムハンマド皇太子が外交的にこれ以上の危険を冒すことは考えにくい。石油供給者であるサウジやUAEが陰謀発覚のリスクを負ってまでアメリカとイランに戦争をけしかける理由もない。吸着式機雷を革命防衛隊の縄張りに入る前に取り付けた可能性もあり得るが、現場で2回目の攻撃が行われたことから判断して、現場の海域を熟知した勢力の犯行である可能性が高い。

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