例えば、現役時の推定平均収入がひと月に50万円なら、金額のスケールをそれぞれ3分の5倍すればいいし、ひと月に20万円と想定するなら3分の2倍するといい。高所得者も低所得者も直面する問題の性質は同じだ。
なお、報告書にも指摘があるように、必要な資産額には、老後に介護施設に入所する資金、葬式代・お墓代、遺産の額などを含まない。別途必要な額を計算に反映したい場合は、資産額にマイナスの数字で入力して計算に反映させることができる。さらに、子供の学費がかかる場合なども、想定額を計算に反映させて支出と貯蓄のバランスを取らなければならない。
他方、退職金を期待できる場合は、これをプラスの額で「資産」に反映させると、必要貯蓄率が低下する。
新入社員ではなく、40代など「途中経過」の場合の計算もやってみよう。
例えば、現在45歳で今後に想定される平均的な手取り収入がひと月当たり40万円で、保有資産額が1000万円のサラリーマンがいて、この人が将来に向けた支出と貯蓄のバランスを考えるとしよう。
公的年金を手取額の30%、老後の支出を現役時代の70%、退職を65歳(現役期間はあと20年)、老後期間を30年と想定すると、この人の必要貯蓄率は24.19%で、毎月10万円近い金額を貯蓄する必要がある。40万円の手取り所得の中から10万円貯蓄することは不可能ではないが、かなりの自制心を必要とする。ざっくりとした数字では、残りの現役時代の支出額がひと月30万円、老後の支出額が21万円となる。退職時点の累積貯蓄額は3322万円だ。
資産寿命は支出と貯蓄の配分で計画的にコントロールを
先の生涯平均手取り収入がひと月30万円を想定したサラリーマンの場合、ひと月に5万7143円貯める必要があったが、この人の場合、年金が厚生年金だけであればiDeCo(個人型確定拠出年金)がひと月2万3000円、つみたてNISAが約3万3000円できるので、月額が5万6000円となり、ほぼ必要貯蓄額に近い。42年間では元本ベースで2822万4000円程度の貯蓄額となる。運用で利益が得られることを期待すると、おおよそ十分な備えになるのではないか。
もっとも、運用は「必ず」うまくいく、というものではない。時々の金融資産の評価額を反映して、必要な貯蓄額を時々計算し直す必要がある。
高齢者向けを標榜する金融商品の広告によくあるように、「資産寿命」を延ばすために、運用商品のリターンに期待することは不適切だ。運用は無理のない範囲で適切に行うとして、資産寿命は支出と貯蓄の配分で計画的にコントロールすることが重要だ(本編はここで終了です。次ページは競馬好きの筆者が、週末の人気レースを予想するコーナーです。あらかじめご了承ください)。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら