日本経済は、消費増税の大逆風に耐えられるか 実質的な経済成長押し下げ圧力は、5兆円規模

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非製造業中小企業の景況感プラス転換は1992年以来

この動きは家計だけにはとどまらない。企業部門にも、インフレ見通しの変化が企業行動を変える兆しがみられ始めた。アベノミクス発動後も、個人消費と比べて回復が遅れていた設備投資が、ついに2013年後半から回復に転じつつある。例えば、2013年10月の鉱工業生産指数において、設備投資の動きを反映する、「資本財(輸送除く)の出荷指数」は、前月比でプラス9.5%と、大幅に伸びた。デフレ予想が和らいだことで、企業経営者は2013年初から増えた利益を、これまでは手元に蓄積してきたが、ついに設備投資に振り向けようとしている。

こうした前向きな企業行動は、「事業環境の好転」として、幅広い産業で表れている。2013年12月調査の日本銀行による短観(企業に対する景況感サーベイ)において、非製造業中小企業の業況判断DIは、プラス4と、なんと1992年以来のプラスに転じた。約20年に及んだデフレと経済停滞を克服する道筋を、日本が着実に辿っていることが、景況感改善のすそ野の広がりをもたらしている。

まとめると、2014年は、(1)世界経済安定を背景とした輸出拡大、(2)金融緩和強化に起因するインフレ予想の高まりによる設備投資回復、が個人消費の落ち込みをカバーしそうだ。これらによって、「脱デフレの途上にある中での消費増税」という大きな逆風になんとか耐えるだろう。残念ながら、2013年度ほどの高成長は難しいが、2014年度の日本の実質GDP成長率はプラス1%を維持し、景気回復基調は保たれると予想する。

村上 尚己 エコノミスト

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むらかみ なおき / Naoki Murakami

アセットマネジメントOne株式会社 シニアエコノミスト。東京大学経済学部卒業。シンクタンク、外資証券、資産運用会社で国内外の経済・金融市場の分析に従事。2003年からゴールドマン・サックス証券でエコノミストとして日本経済の予測全般を担当、2008年マネックス証券 チーフエコノミスト、2014年アライアンスバーンスタン マーケットストラテジスト。2019年4月から現職。

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