"知の巨人"が「どんどん書く」ことを続ける理由 佐藤優が教える「知的アウトプット」のすすめ

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そのための方法としては、私にとってはノートに手書きで記すというのが、最もシンプルで実践しやすく、確実だ。

知識は、身についてこそ、初めて価値あるものになる。「知識を身につける」とは、知識を記憶にしっかり定着させ、必要なときに正しく引き出せるということ。ノート1冊にまとめておけば、必要な情報を、必要なときにすぐに引き出すことができる。

アウトプットのためのツールとしては、ノートのほかに、「手帳」も有用だ。私は、予定管理には「2年手帳」を毎年愛用している。

1年手帳にも翌年3月くらいまでは入っているが、1年も後半に入ってくると、翌年の後半に予定が入ってくることがある。

そこで、例えば2019年には「2019年・2020年」の2年手帳を使い、2020年には「2020年・2021年」の2年手帳を使う。すると、つねに翌年後半にも予定を書き込むことができる。「2年手帳」は、最強の予定管理ツールと言えるだろう。

アウトプットでは「やり直し」厳禁

仕事において、予定管理を怠らないことはもちろん大切だが、「着手するタイミング」も重要である。

書いた文章や企画書などといったアウトプットを、なるべくそのままの形で提出できれば、1回のアウトプットにかける手間は1度ですむ。

ただし、時間の経過とともに状況が移り変わるものを扱っている場合は、早く着手しすぎると、後々「やり直し」が生じやすい。

時事問題などはその代表格だ。締め切りに余裕をもって早く仕上げすぎてしまうと、締め切り直前になってから、世の中の状況の変化に応じて修正する必要が生じてしまう。

そのため私は、時事問題に関する執筆の大半は締め切り当日にとりかかり、一気に仕上げることにしている。2000字以内のコラムであれば、2時間以内で十分に仕上げられるとわかっているから、締め切りの前日か当日に着手する。

一般的に仕事は、なるべく前倒しで着手したほうがいいと思われがちだが、実はそうとも言い切れないのである。私のような専業作家に限らず、これは、どんな仕事にも通じることだ。

仕事では、「明日できることを、今日済ませる」という心がけは大切だ。しかし、仕事内容によっては、今日やったことが明日にはほぼ無駄になってしまうこともある。

前倒しはよいこともあるが、それだけが能ではない。「明日できることは、今日やらない」という発想もあわせもっておけば、仕事の緊急度も含めて「今やるべきこと」を判断できるようになる。

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