「存在のない子供たち」が描く中東の難民の惨状 主人公役もシリア難民、現実の事象を映画化
中東の貧民街に住むゼイン少年は“おそらく”12歳。なぜおそらくかというと、彼には出生証明書がなく、どの公文書にも記録が一切存在していないからだ。
親でさえ、彼の誕生日は把握していない。つまり彼はこの世に存在していないのと同じなのだ。その後、ゼインはとある理由から“クソッたれ”な大人をナイフで刺し、少年刑務所に収監されてしまう。そしてその刑務所の中から「両親を訴えたい」と訴訟を起こす。裁判官から「何の罪で?」と尋ねられた少年は、「僕を産んだから」と哀しい瞳で訴えかける――。
7月20日にシネスイッチ銀座ほかにて公開予定の『存在のない子供たち』は、レバノンとフランスの合作映画。「両親を訴えたい」少年が、そのような決断に至った理由とは何なのか。少年を取り巻く過酷な現実をつぶさに見つめ、観客の心を揺さぶるドラマだ。
12歳の少年が「僕を産んだ罪」で両親を訴える
今年の第91回アカデミー賞でも外国語映画賞にノミネートされたほか、「第71回カンヌ国際映画祭」でコンペティション部門審査員賞とエキュメニカル審査員賞を獲得するなど、世界的にも高い評価を受けている。
この年のカンヌ国際映画祭で、コンペティション部門審査員長を務めていた女優のケイト・ブランシェットは、この年の映画祭の上映作品が掲げていたテーマは“インビジブル・ピープル(見えざる人々)”だったとコメントしていたが、社会から置き去りにされた人々に真っすぐと向きあった作品という意味では、同じ年にコンペティション部門で上映され、パルムドールを獲得した是枝裕和監督の『万引き家族』に通じるものがある。
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