「新幹線でウニ輸送」は物流の未来を変えるか JR東グループ、東北・上越で海産物輸送の実験

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14時24分、新鮮なウニを乗せたやまびこ44号は定刻通り東京駅に到着した。その20分後、今度は新潟駅から新鮮な甘エビを乗せた上越新幹線「とき320号」が到着した。朝9時30分に佐渡の両津港からジェットフォイルで新潟港に運ばれたものだ。

ウニと甘エビはトラックで東京駅から品川駅に運ばれ、15時30分過ぎに品川駅ナカの商業施設「エキュート」の店頭に並んだ。瓶詰めのウニは1瓶(160g)3600円。「採算は度外視。お客様が買ってくれるのではないかという値段です」と担当者はいう。11日を含め、同様の新幹線物流は21日まで計6回行われる予定だ。

長所はスピード輸送

盛岡駅で新幹線にウニを積み込む様子(撮影:尾形文繁)

新幹線物流の長所は何といってもスピードだ。「宮古から東京までトラック輸送では10~12時間かかるが、バスと新幹線の組み合わせなら6~7時間しかかからない」と、JR東日本スタートアップの担当者は話す。新幹線で運べば、早朝に水揚げされた新鮮な海産物を夕方には都内の店頭で売ることができる。「新鮮」という点が消費者にきちんと認知されれば、海産物の新幹線物流が本格稼働する可能性はありそうだ。

新幹線を貨物輸送に活用する試みは以前から行われてきた。たとえば1981年に東海道新幹線・東京―新大阪間の「こだま」で書類などの小荷物を運ぶ「新幹線レールゴー・サービス」がスタート。その後順次路線を拡大し、東海道新幹線でのサービスは2006年に廃止されたものの、現在も東北新幹線・東京―仙台間などで行われている。今回の新幹線による海産物輸送もレールゴー・サービスのノウハウが活用されている。

JR九州は「新幹線を活用した物流事業の検討」を中期経営計画で打ち出している。青柳俊彦社長は「以前から在来線で新聞などを運んでおり、その延長線上で新幹線でもできるのではないか。新幹線を人の輸送以外にも使う多機能化は、時代の流れに沿っている」と話す。

ただ、「アイデアはあるが具体的なやり方が難しい」。列車の客室を貨物スペースに使う方法だけでなく、今回の新幹線による海産物輸送と同様、業務用スペースを活用する案も検討されているようだ。

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