「新幹線でウニ輸送」は物流の未来を変えるか JR東グループ、東北・上越で海産物輸送の実験

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新幹線で輸送され、店頭に並んだウニと甘エビ(撮影:尾形文繁)

北海道新幹線開業前の2010年には、新幹線の利便性を高めるため、道南地域で「新鮮な魚介類や野菜・果物を新幹線で首都圏に運んで、地域経済を活性化する」というシンポジウムが開催された。前年の2009年には北海道の弁当を東京で販売する実証実験が行われている。

当時は東北新幹線も八戸止まりだったので、弁当輸送は急行「はまなす」で函館を3時22分に出発し、青森で特急「つがる」に乗り換えて八戸へ。そして新幹線で八戸を6時55分に出発し、東京に9時51分に到着するという6時間がかりの行程だった。今なら、東京―新函館北斗間は4時間を切る。

北海道新幹線は、JR貨物との共用走行という点で貨物とのかかわりが注目されている。青函トンネルとその前後の区間は新幹線とJR貨物の在来線貨物列車が共用しているので、新幹線の速度は在来線並みに抑えられている。そこで、国、JR北海道、JR貨物は、新幹線のコンテナに搭載して高速輸送する「貨物新幹線」の開発を検討している。アイデアは面白いが、車両の開発や、在来線と新幹線のコンテナ積み替えにかかる手間を考えると、実現は簡単ではなさそうだ。

新幹線物流の可能性

青函トンネルから話は変わるが、JR九州の初代社長を務めた石井幸孝氏は、新幹線が営業走行しない深夜0~6時の時間帯に、集配業者が利用するJITBOX(1.1m×1.1m×2mのローラー付きボックス)を新幹線で運ぶことを提案している。このボックスは新幹線1両で32~40個積載できるので、16両編成なら最大640個を運べる計算だ。これは10トントラック37台分に相当するという。

本来は保守作業に充てられる深夜時間帯に新幹線を走らせることが妥当かどうかという問題はあるものの、青函トンネルの貨物新幹線と比べるとはるかに簡単だ。新幹線の新たな活用法として一考する価値はある。その意味で、6月11日に行われた海産物の新幹線輸送は、将来の新幹線物流の第一歩といえるかもしれない。

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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