「紙おむつ原料」でついに経営統合が起きたわけ 日本触媒と三洋化成が2年後をメドに合併

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統合メリットはSAPだけではない。両社ともリチウムイオン電池、化粧品素材、ライフサイエンス(ペプチド医薬、創傷治癒材など)という領域で新規事業の開発を加速させている。とりわけ、「京都ベンチャー」の血脈を受け継ぐ三洋化成は、永久帯電防止剤や燃費向上の潤滑油添加剤など、ユニークなニッチ商品を積み重ねてきた実績がある。

直近でも、慶応義塾大学発の全樹脂電池ベンチャーに過半出資したり、中国で自社ブランドの化粧品の発売を計画したりするなど、新事業への目利き、行動力には定評がある。

両社の開発力がかみ合えば、新事業の創出スピードは倍加するが、反面、開発力のベースとも言うべき「ユニークさ」を重んじる気風が、あるいは統合のハードルになるかもしれない。

突然の統合発表に社員から驚きの声

記者会見の席上、日本触媒の五嶋祐治朗社長は「(両社は)企業理念、気質も似通っている」と言い、三洋化成の安藤孝夫社長は「どっちがどっちを、ではなく、対等の精神で。もし、そうでなければ、乗らなかった」と述べた。統合の検討に関する基本合意書には、人員整理は行わないこと、出自に基づく不平等な取り扱いを行わないことが明記されている。

だが、両社の売り上げは、日本触媒3497億円に対し、三洋化成1616億円。営業利益は日本触媒が三洋化成の2倍、純資産は2.5倍だ。統合は持株会社を設立し、両社がぶら下がる形を取るが、2年後をメドに合併に向けて協議を進める。合併となったときに、規模の差をどう反映するのか。

突然の発表に両社の社員の間には驚きが広がっている。ある中堅幹部が言う。「びっくりした。(相手は)ライバルと思ってきた。もちろん、(統合を)やることになるのだろうが、今回の発表はあくまで統合を検討することについての基本合意。統合する、と決めたわけではない。まだまだ先の話でしょう」。

三洋化成の社是にこうある。「企業内の全員が共同の夢を抱き、自主性を持って革新にチャレンジする時、豊かな利潤が生まれて来る」。両社社員の「共同の夢」となるようなスキームを作り出すことができるのか。統合の成否はそこにかかっている。

梅沢 正邦 経済ジャーナリスト

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うめざわ まさくに / Masakuni Umezawa

1949年生まれ。1971年東京大学経済学部卒業。東洋経済新報社に入社し、編集局記者として流通業、プラント・造船・航空機、通信・エレクトロニクス、商社などを担当。『金融ビジネス』編集長、『週刊東洋経済』副編集長を経て、2001年論説委員長。2009年退社し現在に至る。著書に『カリスマたちは上機嫌――日本を変える13人の起業家』(東洋経済新報社、2001年)、『失敗するから人生だ。』(東洋経済新報社、2013年)。

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