AIもゴミも仮設住宅も、投資テーマになる ムーギー・キムの弟が説く「インパクト投資」

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世界経済が混迷する中、あえてインパクト投資の意義を語るキム・ムイ氏(撮影:今井康一)
金銭的なリターンだけでなく、社会や環境へポジティブな影響を与えることを意図した「インパクト投資」。2018年度の日本における市場規模は約3440億円で、2017年度の718億円から5倍近くも成長した(Global Social Impact Investment Steering Group国内諮問委員会調べ)。
インパクト投資では、金融機関や財団、ベンチャーキャピタル(VC)などが資金提供することが多い。が、個人でインパクト投資に特化したファンドを立ち上げたのが、キム・ムイ(金武偉)氏だ。外資系証券会社勤務やアメリカでの弁護士経験を経て、ユニゾン・キャピタルやベンチャー経営に携わり、2018年に「ミッション・キャピタル」を設立。ちなみにキム・ムイ氏は、あの『最強の働き方』『一流の育て方』著者、ムーギー・キム氏の実の弟でもある。
絵に描いたようなエリート街道を歩んできたキム・ムイ氏だが、第1号ファンドの立ち上げまでには涙ぐましい努力と、泥臭い仕事の数々があった。

まずは“恩を売ること”から始めた

──2月、自動運転ベンチャーのZMP社と遺伝子ベンチャーのジェノプラン社に、約1億円ずつ投資しました。

ミッション・キャピタルを立ち上げたのが2018年8月。トラックレコード(運営実績)のない無名の第1号ファンドを立ち上げるにあたり、まずは投資先を見つけることから始めました。でもお金が集まっていない状態でデューデリジェンス(資産査定)をし、社長にインタビューさせてもらうのは、本当に大変だった。まずは信頼してもらうために、投資候補先でタダ働きするなど恩を売ることから始めました。

──タダ働きですか?

ジェノプランは昨年夏、ソフトバンクベンチャーズやサムスン電子系の投資会社などから、13億円を調達しています。プレスリリースを見た僕は、すぐにCEOのブライアン氏につないでくれる人に連絡し、韓国ソウルへ会いに行って「1億円投資したい」と申し出た。即座に断られたけど、どうやら僕に会ってくれたのは、日本市場開拓を手伝ってくれる人と勘違いしているようでした。

だから僕が「日本で何をしたいの?」と聞くと、(向こうから)「保険会社や保険代理店と手を組んで、遺伝子情報に基づいた医療保険販促ビジネスをしたい」と相談されました。

東京に戻ると、大手外資系生命保険会社に勤める年収億円単位の敏腕営業マンを数人集めて、六本木ヒルズで高級ランチをごちそうしながら徹底的に情報収集しました。

業界の体質や国との関係など業界情報もふんだんに盛り込みつつ、日本での事業戦略について膨大な量のリポートにまとめて、ブライアンに韓国語でメールを送ったんです。するとそれに感動してくれて、一度は手じまいした資金調達を、既存株主全員に了解をとりつけて僕のファンドのためだけに再開してくれました。

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