AIもゴミも仮設住宅も、投資テーマになる ムーギー・キムの弟が説く「インパクト投資」

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──2億円はどうやって集めたのですか。

投資家はすべて国内法人です。投資は、目には見えないビジネスだからこそ、信頼がすべて。ファンドに入ってくれそうな投資家に、「高いリターンを上げてみせます」だの「投資を通じて社会貢献します」だのと説明しても、そんなファンドは山ほどあるから簡単にお金は集まらない。たとえタダ働きをしようが、誰が見てもすばらしい良質な投資案件を引っ張れることが、ファンドマネジャーとして信頼を得る手段の1つです。

僕も自分のパッションをリアライズ(現実化)させるためなら手段を選ばない。そこまでするのは、やりたいことやなりたい未来像があったとき、実際に行動を起こしてみて初めて見えてくる景色があるから。

資金調達が終わっているベンチャーに、「僕は必ずお金を集めるからデューデリさせろ」と根掘り葉掘り聞くわけです。そこで投資を決めても、最後の最後で当てにしていた投資家さんが「やっぱり今回は(ファンド出資を)見送り」と、突然断ってくる。

何とか別の投資家を紹介していただいてお願いに行ったら「トラックレコードもないのに、リターンは何倍にしてくれるんですか?」と迫られます。それでも諦めずに食い下がりました。

──投資家はインパクト投資に関心があるよりも、キムさんだからお金を出しているのでは。

金武偉(キム・ムイ)/1978年京都生まれ。16歳のとき、外交官を目指して渡米。高校・大学をアメリカで履修後、大学院留学の学費を稼ぐため帰国し、ゴールドマン・サックス証券に入社。JPモルガン証券に転籍後、再度渡米し、ボストン大学ロースクール履修。ニューヨーク州で弁護士資格を取得し、2008年から約5年間国際案件に携わった後、ユニゾン・キャピタル投資チームに参画。その後ベンチャー経営に転身し、2018年8月にミッション・キャピタルを立ち上げる(撮影:今井康一)

インパクト投資に納得しているのは半々ですね。投資先が決まっていないのに、僕のバックグラウンドとインパクト投資について説明しただけで、多額のファンド出資金を振り込んでくれた会社もあります。

認知症を軽減するAI(人工知能)の研究や、海のプラスチックゴミを集めてデザイナー椅子を作る家具メーカー、3Dプリンタで被災地用の仮設住宅を作るベンチャーなど、いい会社は世の中にたくさんあるから、世界を飛び回って投資したいと説明したら、契約書もないのに前受金として振り込んでくれた。

僕自身は2011年にニューヨークで弁護士として働いていたときにインパクト投資を知りました。投資先が社会問題を解決し、ヘッジファンドにも劣らない投資利回りIRR(内部収益率)20%を叩き出し、さらに成功報酬を受け取ってお金持ちになれるなら、なんていい人生なのかと思ったのがきっかけ。

今はインパクト投資にとどまらず、割安な上場株や持ち合い株の放出案件など、マルチストラテジーファンドとして案件ごとに資金調達しています。

興味があるのはフードテックの分野

──注目している分野は何ですか。

ベンチャー投資で個人的に注目しているのはフードテック(の分野)ですね。6月の株主総会で、幸楽苑ホールディングスの社外監査役に就任予定ですが、食はもともと好き。

フードテック系では植物性人工肉を使ったシリコンバレーベンチャーにも注目していて、紹介もなく国際電話をかけて、「日本でビジネスするなら、僕とジョイントベンチャーやろう」と口説いたりしています。消費者が喜び、家畜用の土地が解放され、CO2排出量も減る。まさにインパクト投資です。

食の流通改革も広い意味で僕にとってはフードテック。これからは機械が料理するようになるから、巨大なセントラルキッチンを建設し、ちょっと立地のいい空き家を小さなセントラルキッチンにして料理を仕上げ、ウーバーイーツを使って宅配する仕組みが広まると思う。

そうなれば過疎地に住む老夫婦や育児中の家庭も、食事を準備する負担から解放される。配送費が高くなりそうだけど、そこをZMPの自動運転技術が補ってくれる世界をイメージしています。

あとはブロックチェーンが好きですね。情報複製が本質のインターネット上に、絶対に複製できないブロックチェーン技術が登場し、新たな信用創造が起こるのが楽しみです。実際、5月にはエストニアに行き、ブロックチェーンベンチャーの投資を検討したりしています。

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