「経歴詐称」にだまされる日本人の致命的な不備 優秀な人材が実は「実績ゼロ」の可能性もある

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企業によっては、もっと厳しく求職者の学歴や職歴を確認するために、専門の調査会社に依頼をしていることもある。これらは企業の依頼を受け、求職者の学歴や職歴はもちろんのこと、個人の信用情報や犯罪歴の有無、外国人であれば就労ビザの有無などを含め、それが正しいものだという“お墨付き”を与える業務を行っている。

実際、これらの調査会社が行う調査は、非常に厳しい。過去在籍していた企業の在籍期間を確認するために、入社最初の月と、在籍最終月の給与明細書(のコピー)を確認するようなケースや、卒業した大学に対し、在籍の有無や成績の内容に至るまでを、細かく電話やメールで確認するようなケースもある。

仮に、こういった調査を踏まえたうえで、求職者の学歴、職歴、その他身辺情報に虚偽の記載や詐称と思われるものが発見された場合、たとえいったん内定の旨が通知された後であったとしても、その採用自体が白紙になってしまうことがある。企業側としては、応募の段階で、何らかを偽っている求職者は、入社後も何かを偽りかねないと考えており、それがコンプライアンスに反するようなことにつながるのを大きく懸念しているのだ。

もちろん仮に、こういったことが起こった場合、その採用した人材についての責任は、人事に課せられることになる。自分のキャリアに傷がつかぬよう、人事も必死で精査することになるわけだ。

まだまだ対応できてない日本企業

海外企業では、求職者の経歴や身辺に関わる情報を厳しくチェックすることが当たり前になっている。一方で日本企業では、ここまできちんと調査をする企業は少数だ。求職者の「海外留学経験」という経歴が、実は「ディプロマミル」によるものだったとしても、それをきちんと見抜けない企業は少なくない。

なぜなら多くの日本企業は、求職者の経歴が正規のものかを海外の機関に“外国語で”問い合わせるということがハードルになっていたり、そもそも経歴が正規のものかを確認しなければならないということを認識していない場合があるからだ。

近年、日本企業もビジネスのグローバル化に伴い、いわゆる“グローバル採用”という形で、海外の人材を採用するケースが増えてきている。だが一方で、経歴詐称というものに対して、そもそも不慣れであるがゆえに、きちんとした対処ができていないのが現状である。

このままだと「グローバル化の流れに乗って“海外から優秀な人材を採用した”」と思ったら、実はまったく実績のない人を採用してしまった、とだまされるような事案が数多く出てくるかもしれない。

熊村 剛輔 セールスフォース・ジャパン DX ビジネスコンサルティング ディレクター

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くまむら ごうすけ / Gosuke Kumamura

1974年生まれ。プロミュージシャンからエンジニア、プロダクトマネージャー、オンライン媒体編集長などを経て、大手ソフトウエア企業のウェブサイト統括とソーシャルメディアマーケティング戦略をリード。その後広報代理店のリードデジタルストラテジストおよびアパレルブランドにおいて日本・韓国のデジタルマーケティングを統括後、クラウドサービスベンダーにてエバンジェリストとなり現在に至る。

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