「ゲームは脳に悪い」という終わりなき論争 「尾木ママ」のブログでの発言を検証する

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これを読む限りだと、ゲームが依存症を引き起こす要因になっているのではなく、ゲームにはまりすぎる人は少なからずいて、そういった人には治療が必要としか書いていません。つまり、ゲームの部分を他の何かに変えても成立するわけです。

お酒を飲みすぎてアルコール依存になってしまう人は飲酒する人の中に一定数存在し、アルコール障害として治療が必要です。しかし、お酒自体が依存症を引き出す要因として考えられておらず、嗜む程度は推奨されているのと一緒です。

依存症とスポーツは別物

実際、ICD-11の項目には「6C50 ギャンブル障害」「6C5Y 中毒性の行動によるその他の特定の疾病」というものもあり、何にでも当てはまると言うのがわかります。世界保健機構の日本での窓口、厚生労働省にゲーム障害について聞きました。その結果、ゲームがほかと比べて依存症や障害を引き起こしやすいということは、世界保健機構の条文には書かれていないと確認も取れました。

つまり、上記の記述のゲームの部分を、ギャンブルにしようが、飲酒にしようが、スポーツにしようが、仕事にしようが、アイドルにしようが、ホストにしようがかまわないわけです。生活に支障をきたすほどひとつのものを優先し、それ以外のことが破綻してしまうような状態が12カ月以上も続けば治療が必要だというだけの話です。

仕事に没頭し、家庭を破綻させている夫がいても、給料が入ってきさえすれば容認するのに、ゲームで家庭崩壊が起きたら問題になるということで、そこに矛盾があることに気がついていないわけです。

ファミ通ゲーム白書によると、日本のゲーム人口は4900万人以上だそうです。それだけの数がプレーをしていれば、一定確率で依存してしまう人、障害と認定されてしまう人は出てきます。それはゲームだからではなく、病気や障害というものがそういったもので、すべてをゼロにすることは現時点では不可能なのではないでしょうか。

岡安 学 デジタルライター

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おかやす まなぶ / Manabu Okayasu

eスポーツを精力的に取材するフリーライター。ゲーム情報誌編集部を経て、フリーランスに。さまざまなゲーム誌に寄稿しながら、攻略本の執筆も行い、関わった書籍数は50冊以上。現在は、ウェブや雑誌、ムックなどで活動中。近著に『みんなが知りたかった最新eスポーツの教科書』(秀和システム刊)、『INGRESSを一生遊ぶ!』(宝島社刊)。@digiyas

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