「ゲームは脳に悪い」という終わりなき論争 「尾木ママ」のブログでの発言を検証する

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

また、「単なる大型の【ゲームの大会】にしか見えない!」と書かれていますが、これは合っていると思います。ゲーム大会です。それは誰も異存はありません。ただ、ゲーム大会であることが、何かしろの否定材料になりうるとも考えがたいのではないでしょうか。

例えば、「全国高等学校クイズ選手権 高校生クイズ」も単なる大型のクイズ大会です。それだからといって、クイズやゲームは遊びでしかない、真剣に取り組む競技としては考えられないというのは、さすがに高校生の取り組みを軽んじている気がします。全国高校生eスポーツ選手権も取材しましたが、参加している高校生たちは、部活のように取り組み、楽しんでいました。

次に「脳への影響も科学的に明らかなのに」という一文です。

これは何を指しているのかわかりませんが、もし「ゲーム脳」について言っているのであれば、科学的根拠はありません。

ゲーム脳は日本大学文理学部体育学科教授である森昭雄氏の書籍『ゲーム脳の恐怖』が発端になっているものです。この『ゲーム脳の恐怖』では、ゲームをプレイすることでβ波が低下し、α波がそれを上回ることで脳波が認知症患者と同じと定義したものです。

ただ、このα波がβ波を上回ることが問題視すべきであるかは科学的に定義されているわけではなく、脳科学でおなじみの川島隆太教授など多くの学者、識者から否定されています。α波はリラックス状態で多く出現することから、どちらかというと危険の脳波というよりは、脳がリラックスしたいい状態であるわけです。「ゲーム脳」という言葉がキャッチーで使いやすい言葉だったので、その言葉が生まれた背景を見ずに使用している人が多く、実際には科学的論拠があるとは言い難いと言えます。

近年よく聞く「ゲーム障害」とは?

そして「世界保健機構が昨年6月にゲーム障害を疾病認定したことはどう理解するのでしょうか?」とあります。さらに5月27日には「ゲーム依存症は病気と認定!!」という新しい記事も掲載してます。確かに5月25日に世界保健機構が「ゲーム障害」について治療や予防が必要な事案として2022年から施行されるとの発表がありました。

ただこれも、世界保健機構が発表した文章を読んでみると見解が多少変わってきます。世界保健機構がホームページで掲載している「死亡率および罹患率統計のためのICD-11」の「6C51 ゲーム障害」に以下のような説明が記述されています。

ゲーム障害は、ゲームをプレイする開始時間や頻度、集中度、期間、終了時間などにおいて自分で制御することが困難となり、ゲームが他の生活や活動よりも優先されてしまう。そして、生活において悪い影響や結果を引き起こしたとしても、ゲームをし続けてしまう。その結果、自分自身、家族、社会、学校、職場などに重大な支障をきたす。また、これらの症状が連続的もしくは一時的でも再発する可能性も含め、12カ月間にわたって表れることでゲーム障害と言う診断に当てはまる。
次ページゲームを他の何かに変えても成立する
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事