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骨太解説「日本の金融政策」がかくも無力なワケ 経済学の重鎮が「追われる国の経済学」を読む

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  • 藪下 史郎 早稲田大学政治経済学術院名誉教授
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こうした金融機関の不健全化は、金融システム全体の不安定性をもたらす可能性がある。ある銀行のバランスシートや流動性の悪化が、健全な銀行にも信用不安を波及させ、銀行全体の持つ決済機能や貸し付け機能が破綻してしまう。

このように、銀行システム全体では銀行間で外部性が存在する。そのためシステミック・リスクを回避するためには、銀行への公的資金の投入などの金融当局による介入によって、信用不安が他金融機関に波及しシステム全体に広がるのを素早く阻止しなければならない。

過去の奴隷になってはならない

このように、外部性が存在するときには、それがプラスの場合でもマイナスの場合でも、市場に任せるのではなく、果敢な政府介入が必要になる。さらに、グローバリズムが進む世界経済で資本移動の自由化が、新自由主義の主張するようなプラスの結果をもたらしていない点でも、すべて市場メカニズムにまかせるという市場原理主義ではなく、現実主義的な政策が欠かせないのである。

主義・原理にむやみに従うのでなく、現実経済の動きを見て政策運営を行う必要があるとするのが、クー氏のメイン・メッセージの1つである。

クー氏は、日銀政策当局者、欧州中央銀行さらに多くのエコノミストは、彼らが学んだ経済学に基づく政策を遂行しており、現実の経済が変化したことを認識していないと批判している。この批判は、「どのような知的影響とも無縁であると自ら信じている実際家たちも、過去のある経済学者の奴隷であるのが普通である」という、ケインズ『雇用・利子および貨幣の一般理論』の一文を思い出させる。

本書の訳文は大変読みやすい。本書は多くの読者に対して、失われた20年と揶揄される日本経済やその将来を考える際などに多くの示唆を与えてくれるものである。

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