「サブスクバブル」で生き残る企業、消える企業 「ユーザー有利」はスタートラインにすぎない

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これと対照的なのが、サブスクリプションと極めてよく似ていて混同する人が多いリースやローンです。両者は、この「継続の拘束力」の観点から考えると、明確に線引きできます。

リースやローンにおける「契約」は、サブスクリプションとは異なり、法的な拘束力があります。月々の利用料が滞れば、とたんに延滞利息が発生します。契約によって縛られるので、いったん契約したら継続の義務を負うことになるのです。途中で辞めようものなら、多額の違約金を支払う可能性があります。すなわち、ユーザーにとって「継続して利用する」ことに対する拘束力が大きい状態です。

リースやローンよりサブスクリプションのほうが「ユーザー有利」なのは明白です。

(2)利益回収の時間
利益回収の時間とは、企業が利益を回収しきるのにかかる時間です

企業にとっては、利益を回収する時間は短ければ短いほど望ましく、ユーザーにとっては、時間をかけて回収してもらうほうが望ましいといえます。

サブスクリプションは、この点においてもユーザーに有利です。

20万円もする高級ブランド品のバッグを月額数千円で利用できるサブスクリプションが人気ですが、これは、自身の1回当たりの支払いの負担は少なく、でも高額商品を利用できるという大きなオトク感があります。これは、企業にとっては薄く長く利益を回収しなければならないことを意味しています。

企業は、ユーザーに簡単に解約されないよう、なるべく継続して利用してもらう工夫をしなければなりません。とくにモノ系サブスクリプションは、限界コストがゼロに近いデジタル系サブスクリプションとは異なり、原材料費や物流費がかかるため、そこに企業にとって必要な利益を織り込むと相当な課金回数を想定しなくてはなりません。

もっと言えば、私は、サブスクリプションはビジネスモデルの根幹を大きく変えたと思っています。なぜなら、「ユーザー有利」なサブスクリプションがこれだけ浸透したということは、大量にプロダクト(製品)をつくって売るだけの「企業有利」な旧来型のビジネスモデルは、もう通用しなくなったことを意味するからです。

ユーザーとのつながりを徹底して考えよ

ここで肝心なのは、売り切り企業はこの先も売り切りを続けようが、サブスクリプションに転向しようが、「ユーザー有利」とはどういうことなのか、何をすればいいのか、改めて立ち止まらなくてはならないということです。

そのヒントは、「価値提案としてのつながり」を考えることにあります。

売り切りモデルの企業も、価値提案をしてきたはずですが、しかし実際には、たくさんの機能を盛り込むことをウリにするなど、プロダクトそのものだけを提案した企業が多いのではないでしょうか。

しかし、サブスクリプションにおける価値提案は、それでは不十分です。ユーザーのジョブ(用事)を見極めて、それを達成するために伴走しなければならないのです。

ユーザーは企業との関係性を感じない限り、継続して利用したいとは思いません。企業は、ユーザーが自身の目的を達成するためにユーザーの活動を認識し、その中で企業が補助できるタッチポイントを積極的につくることが求められます。

こうした一連のユーザーとの関係性を、私は「つながり」と呼んでいます。継続的に利用してもらいたいなら、継続的な関係性をいかに構築するか。それを徹底して考えることがサブスクリプションの本質なのです。

川上 昌直 兵庫県立大学国際商経学部教授

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かわかみ まさなお / Masanao Kawakami

1974年大阪府生まれ。福島大学経済学部准教授などを経て、2012年兵庫県立大学経営学部教授、学部再編により現職。博士(経営学)。「現場で使えるビジネスモデル」を体系づけ、実際の企業で「臨床」までを行う実践派の経営学者。ビジネスの全体像を俯瞰する「ナインセルメソッド」は、規模や業種を問わずさまざまな企業で新規事業立案に用いられ、自身もアドバイザーとして関与している。専門はビジネスモデル、マネタイズ。主な著作:『「つながり」の創りかた』(東洋経済新報社)、『ビジネスモデルのグランドデザイン』(中央経済社)。

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