「築地場外」が直面するブランド存続の危機感 豊洲移転から7カ月、市場はどう存続するのか

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築地場内跡地の利用はどのように進むのか、場外の関係者もあまり知らされていない(筆者撮影)

東京都中央卸売市場HPの市場統計情報によれば、築地旧市場の水産の取扱量は2017年で約38万5000トン。2007年の約56万8000トンから10年間で30%以上減少していた。

近年では水産業者の淘汰が進んでいたが、豊洲移転後も状況は好転していないという声が大半を占めており、この流れに拍車をかける可能性は高い。実際の取扱量も、2018年10月~2019年4月の半年間を前年同期と比べてみても築地市場のときから約7%減少している。

「築地は守る、豊洲は生かす」

2017年6月、小池百合子都知事は豊洲の新市場に移転した業者たちを守るための方針として、こう発言した。その一環として場内跡地に「食のテーマパーク機能を有する新市場開場」構想を打ち出したが、2019年2月に撤回している。跡地は国際会議場・展示場として整備されることも発表されている。

築地場外市場商店街振興組合関係者によれば、現在に至るまで都から食のテーマパーク構想撤回の説明はないという。つまり築地場外市場は、当面の間行政の手に頼ることなく“築地ブランド”を保っていく必要にかられているのだ。「私たちは変わらないといけない」「いや、伝統を守り変わらないでいるべきだ」。築地の街に“残る“ことを選択した人々の間では、さまざまな声が交錯していた。

場内のない築地は、浅草寺のない浅草のよう

「今の築地は浅草寺がない浅草みたいなもんですよ。浅草寺がない浅草も町としては成り立つけど、魅力は半減するでしょ。場内がなくなった後の築地はまさにそんな状態です」

1960年の創業から60年弱。築地に集う業者たちの憩いの場であり続けた、米本珈琲店の代表米本謙一氏は現在の街の状況をこう表現する。米本氏は同社代表として30年以上、時には業者達の潤滑油となり築地の街を見守ってきた。

米本珈琲店代表の米本謙一氏(筆者撮影)

現在築地で2店舗の珈琲店を運営する同社では、場外移転後ある変化が生まれた。それは、早朝の営業時間を30分後ろに遅らせたということだ。

もっともこれは、米本珈琲店に限った話ではない。場外の店舗では、営業時間を遅らせるというケースも散見される。

ではなぜ喫茶店にとって書き入れ時ともいえるタイミングの早朝の時間をズラしたのか。米本氏が続ける。

「ウチのようなお店では、街の密度が売り上げに直結します。密度が低ければダメで、高ければよい。それが場内移転後はずっと密度が低い状況なんです。ある意味営業時間を遅らせたのは苦肉の策ですが、本当はもっと遅らせるべきなのかもしれない。これが今の築地場外が置かれている状況なんです」

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