「築地場外」が直面するブランド存続の危機感 豊洲移転から7カ月、市場はどう存続するのか

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取材当日は雨だったが、場外市場には外国人を中心に多くの観光客が訪れていた(筆者撮影)

現在の場外市場は観光客による売り上げに支えられている部分が大きいとみられる。10~14時の時間帯は、移転前と同様に、歩くのも詰まるほど混雑を見せている。

それに付随するように、露骨なまでに英語や中国語のメニューや看板が並び、3000円や4000円を超えるような高額な海鮮丼を目当てに列をなす旅行者であふれているのだ。もっとも、こういったインバウンド特需に関しては懐疑的な見方を持つ商店も存在する。

場外の海鮮系飲食店のスタッフはこう話す。

「外国人観光客というのは、ある意味“劇薬”です。場外にはこれだけ店舗があるにもかかわらず、一杯で3000円、4000円を超えるような海鮮丼はやっぱり飛ぶように売れるんですよ。これはやはり築地という街のブランドがあるからこそ。一方で、東京や近郊の人が来て食べるかというとそうではない。

正直、今から方向転換をするのは難しいほど、外国人観光客の存在は、われわれにとってドル箱でもあり無視できないほど大きくなった。いつまでこの状況が続くのか、という不安は拭えないですが……」

観光客の恩恵を受けてきたのは、土産物店や専門店も同じだ。場内にある包丁店や食器店では、この10年間で大きく売り上げを伸ばした。だが、場内移転を期に状況は一変したという。場内の包丁専門店である「有次」の宮之原洋氏はこう話す。

「場内移転の翌日から、来店数は半数くらいまで激減しました。業者さんが減ったというよりは、ウチの場合は単純に観光客の絶対数が減りました。実売数も感覚的には半分くらいまで落ちたと思います。半年以上経ちましたが状況は変わらず、この現状をどうにか変えないと、という危機感を持っています」

日常使いをしてもらうことが今後の生命線になる

エアポケットとなった早朝の売り上げをカバーするために、新たなターゲットに焦点を当てている企業もある。鶏肉、鴨肉の卸売業者として112年目を迎えた株式会社鳥藤は、場内移転後に地域密着型の経営へと舵を取り始めている。代表の鈴木昌樹氏はその理由を話す。

鳥藤代表の鈴木昌樹氏(筆者撮影)

「人々が築地に持っているイメージは、『高くていいものが買える』だと思うんです。ただ、それを『安くていいものがある』に変えていかなければいけないタイミングが来ている。

この地域(中央区)に住む人は、銀座三越などで日用品を買う方も多いんですね。でも、築地で買い物をするという概念はあまり浸透していない。

それは、たぶん築地をスーパーやデパートのように使うという発想自体がほとんどないからなんです。場内が移転した今、地域の人々に日用的に買い物をしていただくということは築地の今後の生命線になると考えています」

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