「築地場外」が直面するブランド存続の危機感 豊洲移転から7カ月、市場はどう存続するのか
場外市場の店舗の中にも従業員を何十人と抱える老舗企業もあれば、夫婦2人で切り盛りするような店舗もある。商店街としても3月から毎月末に「千円市」を開催するなど、新たな試みを実施するなど動きを見せている。それでも街全体が足並みをそろえることは難しい、と米本氏は言う。
「場内移転後、廃業したお店も少なくないし、雇用を失った友人もいますよ。高齢の人も多いし、自分たちの代だけで終わる人もいるので、当然温度差は生まれます。築地の街を盛り上げようとしても、いろんな事情の人がいるので、そこでみんなが同じ方向を向くというのは困難です。
築地の街と共に生きてきた私にとっては、この街の活気が好きだし、人が集まって『ああでもない、こうでもない』と情報が飛び交うような、なじみある光景が見られなくなったのは、やはり寂しいですよ」
築地はプロが集う街として歴史があった
場外の中でもひときわ目を引く看板を掲げるのは、1892年創業の昆布商の吹田商店だ。同社代表の吹田勝良氏はこのメッセージに込められた意味をこう説明する。
「築地という街はずっと“プロが集う街”として歴史を紡いできた。例えば僕らは料理人が修行したお店を聞くだけで、求めている味や商品がわかるんですね。職人もそれを求めて築地に来るし、この街の商店はそういう商売をしてきた。つまりプロが時間を短縮できる、効率的な街として機能してきたんです。
そういう誇れる文化はなくしてはならないし、築地の原点はこの効率性。だから、すべてを変える必要はないし、長い目でみて変わらない努力をすることも重要なんですよ」
吹田商店も場内移転後は、売り上げが減少しているという。それでも、同社はあえて変わらないでいることの必要性を説く。現在の築地は観光客による一過性のバブルが去り、本来の街の姿に戻っているのでは、と吹田氏は話す。
「築地の本質は、業者を含めたプロを対象とした街ということです。閉場までの最後の10年間は、そこに観光という要素がプラスされていた。ただ、場内がなくなり、商売に対しての街全体の意識のギャップがどうしようもなく広がった今、原点に回帰する必要もあるのでは、ということ。場内がなくなっても国内外の観光客にとって魅力が詰まった街であることは変わりない。
その一方で、私はある意味で変わらないことへの割り切りも必要だと考えていますし、駐車場や運搬などの業者にとってのインフラ整備を最優先で考える必要性を感じています」
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