デジタル社会で「管理職」が重宝される根本理由 映画会社は、なぜなくならないのか
プロジェクト型に移行した映画産業
「未来世界」ではさまざまな仕事が分権化され、プロジェクトとして切り分けられるようになっていくことは間違いありません。その一方で、ギグエコノミーの世界では会社はフラット化し、管理職はいなくなるとするテクノロジー理想主義者の期待に反して、会社も管理職も(当分の間)存続しつづけるでしょう。このことは、もっとも早く(1950年代から)プロジェクト型に移行した映画産業でも、映画会社が大きな影響力を持っていることからも明らかです。
一般的な映画のつくり方だと、プロデューサーが企画を立てて出資者を集め、脚本家と相談しながら作品の骨格を決めて、監督と俳優にオファーを出します。低予算でも脚本が気に入ればビッグネームの俳優が出演することもあるし、大作でも自分のイメージに合わないと断られます。監督は、助監督、撮影、音声など現場を支えるスタッフを集めてクランクインし、作品ができあがるとチームは解散し、次の映画(プロジェクト)のための準備をはじめるのです。
ここで登場した人たち――プロデューサー、脚本家、監督、俳優、現場スタッフ――の中で「会社員」は1人もいません。俳優は芸能事務所に所属しているでしょうが、それはマネジメントを代行してもらっているだけで、人気が出れば収入は青天井で、仕事がなければお金はもらえません。こうした働き方ができるのは、大物監督や人気俳優だけではありません。いったん仕事のやり方がプロジェクト化されると、現場スタッフから端役にいたるまですべてのメンバーがフリーエージェントになるのです。
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