デジタル社会で「管理職」が重宝される根本理由 映画会社は、なぜなくならないのか
映画制作の現場がここまで徹底して「ギグ化」しているにもかかわらず、映画会社は相変わらず必要とされています。大作映画をつくるには数十億円、ハリウッドなら数百億円の制作費をかけることもあります。こんな莫大な資金を個人(プロデューサー)が管理することはできませんから、投資家が安心してお金を預けられる映画会社が受け皿になります。
いったん映画ができあがると、今度はそれを全国の劇場で上映したり、DVD販売やネット配信したり、海外に版権を売ったりしなければなりません。作品を市場に流通させるには膨大な事務作業(バックオフィス)が必要で、これも映画会社がやっています。
クリエイターの仕事は会社から分離される
仕事の中には、プロジェクト化しやすいものと、そうでないものがあります。ギグエコノミーに最も適しているのはコンテンツ(作品)の制作で、エンジニア(プログラマー)やデータ・サイエンティストなどの仕事や、新規部門の立ち上げのような特殊な才能と経験が必要なコンサルティングへと拡張されました。
それに対して、利害の異なるさまざまな関係者の複雑な契約を管理したり、大規模なバックオフィスを管理する仕事はこれまでどおり会社に任されることになるでしょう。フリーエージェントがギグで制作したコンテンツ(音楽や映画)も、多くの場合、会社のブランドで流通しています。
プロジェクト型の仕事は、新しいモノ/サービスを創造するクリエイターの世界です。こうした分野は徐々に会社から分離され、フリーエージェントが担うことになります。それに対して会社には、プロジェクト全体を管理するマネジャーのほかに、法律や会計・税務などの専門的な分野をカバーするスペシャリスト(専門職)がいます。
クリエイターはプロジェクト単位で仕事の契約をして、組織に所属するマネジャーやスペシャリストの助けを借りながらコンテンツを完成させ、そうやって生まれた作品は会社のブランドで流通しマネタイズされるのです。
「未来世界」でも(当分の間)フリーエージェント(クリエイター)と管理職(スペシャリスト)は増えていくでしょう。「AIがホワイトカラーの仕事を奪う」との不安が広がっていますが、幸いなことにそうした事態はすぐには起こりそうもありません。
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