もちろん地元の大学から地元企業というルートだけではない。Uターン就職を子どもに期待する親は多い。
「地元に帰って来るように言われた」(理系・大阪大学)
「地元に帰って来ないのかと言ってくる」(文系・琉球大学)
親が地元企業に就職してもらいたい理由は安心したいからだ。「地元に帰って来たほうが今後の人生プランを立てやすいと言われた」(文系・関西学院大学)というコメントがあるが、確かにそのとおりだと思う。
子どもが都会の企業に就職すると、親は自分の知識や経験で将来を予測することができない。地元企業なら評判もわかっているし、知り合いもいるだろう。将来もある程度予測でき安心できる。
ただ、子どもの立場では事情が異なる。地方の場合、地元企業の数は限られていて選択の余地は少なく、将来の転職も都会に比べると難しい。
「有名企業に就職してほしい」
学生の大手企業志向は強いので、就職ガイダンスでは視野を広げて「自分の知っている大手企業だけでなく、知名度は低くても優良B to B企業も研究しなさい」と指導する。学生だけでなく親の大手企業信奉も強い。多くの親は理由も挙げずに大手に行けと言っている。
「大手に行け」(理系・東京理科大学)
「有名企業に就職してほしい」(文系・名古屋大学)
「大手に入ってほしいと散々言われました」(文系・二松学舎大学)
「とりあえず大手を勧めてくる」(文系・慶應義塾大学)
親が大手企業を推奨する理由は容易に推測できる。要するに安定して得をするからだ。将来のキャリアにとっても有利だと親は考えている。
「大企業のほうが安定していると言われた。知名度が高い企業を受けさせられた」(文系・立命館大学)
「東証一部に上場している企業が入社後得をする、と言われました」(理系・甲南大学)
「なるべく大手にしないと、その後の転職が不利だよと言われた」(文系・明治大学)
「大手から中小には転職できるが、逆は難しい」(理系・筑波大学)
将来的な損得以外にも大手企業を選びたくなる理由がある。人間は知らないものに対して警戒し、知っているものに対しては安心する。テレビCMで製品をPRするのもこの心理に訴えているわけだ。
大手企業を学生が志向するのも、親が子どもに推奨するのも同じ心理が働いている。
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