自己肯定感「低い子供」が減らない日本の危うさ 「学力低下」や「薬物依存」に陥るリスクが高い

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しかし、日本の場合には高すぎることは例外であり、自尊感情については「高めよう」という議論が一般的です。また、「自尊感情」という日本語は、そのほかの訳語と異なり、少し頑固な人格像を意味する言葉としても捉えられ、必ずしも日本語として受け入れやすいよい響きだけを持つわけではないようです。

本記事では、基本的には「自己肯定感」という言葉を使っていきます。私たちの研究結果を引用する部分のみ「自尊感情」という言葉を使用していきます。

10歳から「自尊感情」が急低下する

私たちが研究を進めるうちに、日本の子どものQOL(quality of life/生活の質)に大きく関係する因子が自尊感情ということがわかってきました。

小・中学生を対象にして、学校でQOLについての調査を行いました。学校に通う子どもたちを対象とした調査ですので、在籍する学年別に調査結果を公表しています。

その結果、小学3~4年生(10歳)頃から自尊感情が低下し、中学生の年齢にかけて低下し続けていることがわかりました。

図表:「日本とオランダを比較した自尊感情の年齢変化」(出典:『「いい親」をやめるとラクになる』より)

私たちはオランダの子どもと比較をしました。2007年のユニセフの子どもを対象とした幸福度調査で「孤独を感じる」と答えた子どもの割合が最少だったのがオランダだったためです。オランダの子どもでも10歳頃に自尊感情は低下する傾向はあるものの、それほど明確ではなく、思春期以降はあまり低くならないという結果でした。

ほかの国の調査結果をいくつか見ても、学年が上がるごとに自尊感情が低下するのは各国で共通ですが、これほど急激に低下している国はないようです。QOL全体は学年が上がるにつれてゆるやかに低下していく傾向にありますが、日本の場合、自尊感情が10歳頃から急速に低下していくのが目立ちました。

この調査結果を発表したのが2009年のことです。それから約10年が経過し、子どもを取り巻く環境は大きく変化しました。何といっても「ケイタイ」の普及が大きいと思います。文科省も、初等中等教育における学習指導でのICT(情報通信技術)活用を推進しています。

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