「ソニー・MS提携」はゲーム市場刷新の端緒だ

ハードウェアで囲う時代の終焉と新たな競争

しかしゲーム機市場をめぐる環境は大きく変わろうとしている。

クラウドゲーミングと従来の専用ゲーム機は特徴が大きく異なるため、ゲーム機市場がすべてクラウドへと移行していくわけではないだろう。しかし、ゲーム機市場を構成している消費者のうち、カジュアルにゲームを遊ぶ層や、自宅以外でのゲーミング機会を求める層にクラウドゲーミングサービスが広がれば、ゲームプラットフォームのエコシステムに調整を入れねばならなくなる。

3月にグーグルがSTADIAを発表した際、記事(グーグル新サービスは「プレステ」を殺すのか?)で指摘したように、クラウドゲーミングはハードウェアの普及を前提としないため、ゲームコンテンツへの投資成果次第で、すでに普及したゲーム機ブランドを持つ他社を逆転できる可能性を秘めている。

ソニーとマイクロソフトは、それぞれにゲーム機ブランドと“地続き”のクラウドゲーミングサービスを立ち上げていき、各々が得意とする“専用ハードウェアを基盤とするゲーム環境”と”クラウドゲーミング環境”を融合させ、同じコミュニティーの中で行き来しながら遊べるようにしていくだろう。

そうした専用ゲーム機とクラウドゲーミングサービスを融合した体験を、なるべく高い質で素早く市場に普及させていくため、まずは手を握って新しい競争環境に対応することを狙ったのだ。

「競争領域」の変化がもたらした歴史的提携?

ゲーム機市場は成熟が進み、第8世代(PS4、Xbox Oneなどの世代)以降はまったく新しいゲーム環境へと刷新させるのではなく、同じゲームタイトルを共有しながら、段階的に処理能力を向上させることで刷新する手法が採用されるようになってきた。

例えば、PS4には能力向上で4Kに対応するPS4 Proという派生モデルが登場。プレイステーション5は、PS4 Proの性能をさらに向上させた上位互換のハードウェアになるとみられている。

ゲームタイトルも、各ゲーム機メーカーが直接投資をした一部タイトルを除けば、高騰する開発費回収の枠組みとしてどのゲーム機でも遊べる“マルチプラットフォーム”が主流になっている。

そうした中で、ゲーム機プラットフォームを持つ各社競争力の源泉は、ハードウェアプラットフォームの優劣だけではなく、PlayStation Network(PSN)やXbox Liveといったネットワークゲームを遊ぶためのコミュニティーへと徐々に変化している。

提携の背景には、それぞれが持つゲームユーザー同士を結び付けるコミュニティーサービスを、クラウドゲーミングの時代へと速やかに拡大していくことが重要とみたからだろう。

クラウドゲーミングに関しては、グーグルだけでなくアマゾンの参入も可能性としてあるだろうが、さらに長期的にみれば中国にも競合が生まれていく可能性がある。前述したように特定のハードウェア普及を前提としないためだ。

モバイルゲームとゲーム専用機では、ゲームタイトルの作り方や課金手法なども異なるが、モバイルゲーム大手のテンセント、クラウド分野ならばバイドゥなどが競合になっていく可能性もあるだろう。

競争環境が大きく変化するイノベーションの波は必ずやってくる。ソニーとマイクロソフトは互いが持つ競争力、影響力が高いうちに基盤技術を整え、それぞれが得意とする領域で勝負する競争環境を整える――。

まだ趣意書を交わしたにすぎず、具体的な内容は今後詰めていくことになるが、数年後、今回の提携が「歴史的提携」とみなされるようになる可能性はありそうだ。

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