「ソニー・MS提携」はゲーム市場刷新の端緒だ ハードウェアで囲う時代の終焉と新たな競争
ソニーとマイクロソフトが5月17日、AIやクラウドのジャンルにおける戦略提携に向けた意向趣意書を締結したと発表した。AI分野ではソニーが得意とする映像センサーを活用した映像認識・識別など、クラウドではマイクロソフトのデジタルアシスタントサービス活用なども含まれるが、最も注目されるのはクラウドゲーミング技術の共同開発について言及されていることだ。
マイクロソフトが2000年3月にゲーム機市場に参入して以来、ソニーが同じ市場で競う最大のライバルとなっていたが、マイクロソフトは“第8世代”と呼ばれる2010年以降のゲーム機市場で勢いを失い、近年はクラウドゲーミングへと傾注。昨年10月にはクラウドゲーミングサービス「Project xCloud」を発表していた。
クラウドゲーミングは“ゲームストリーミング”とも言われ、クラウド側に設置されたコンピューター上でゲームを動かし、ネットを通じて手元の端末からリモート操作することで、手元に高性能なコンピューターがなくとも高精細な3D映像を駆使したゲームで遊ぶことができる。
クラウドゲーミングは決して新しい技術ではないが、インターネット技術の進歩や通信回線の帯域向上といった環境が整ってきたうえ、一部でサービスが始まった5G技術の低遅延・広帯域を生かせる新アプリケーションとして注目されていた。
同ジャンルにはグーグルが“STADIA”というブランドで年内の参入を発表しており、任天堂もスイッチ向けにサービスを提供し始めていた。
これまでは独自ハードウェアの普及という形で競ってきた各社だが、最大のライバル関係にあったソニーとマイクロソフトの提携は、ゲーム市場が大きく動き始める“最初の一歩”にしかすぎない。
ゲーム機市場における「競争環境」の変化
今回の提携で、両社はクラウドゲーミングを提供する基盤技術を共同で開発する。プロジェクトがうまく進めば、ソニーが将来提供するクラウドゲーミングサービスはマイクロソフトのクラウドプラットフォームを使って提供されるようになるだろう。
ただし、プレイステーションとXbox、2つのプラットフォームが融和するということではない。共同開発するのは、クラウドゲーミングを提供するための基盤技術であり、そのうえで提供されるサービスは各社が開発・提供するもので、ゲーム機市場やその延長線上で展開されるだろうクラウドゲーミングサービスにおけるライバル関係がなくなるわけではない。
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