10万円の「アート」の値段が5倍にもなる理由

日本人が知らない現代アート投資の実態

それまでの美術史を覆すような発想に、いやこれもアートではないか、と誰かが共感したんでしょう。アートの持つ価値を、それまでの目で鑑賞する美しさから、何を表現するかという考え方、コンセプトの面白さに大転換してしまいました。アートはかくあるべしの概念を広げちゃったんです。

「共感力」に評価の軸が移りつつある

──でも現在進行形の無名の才能を素人が発見するのは超困難では。

徳光健治(とくみつ けんじ)/1965年生まれ。山口大学経済学部卒業後、双日、アーサー・アンダーセン、サイバードを経て、2008年当社設立。アジア最大級の現代アート販売サイト運営のほか、東京・銀座にギャラリースペースを構える。若手プロが活躍できる環境作りに注力中。(撮影:佐々木 仁)

少なくとも美術に関する基本的知識や情報、その作家についての下調べは必要ですね。その作品が美術史の文脈上新しいかどうかを見分けるギャラリーや美術館、キュレーターや有名コレクターなど、世間に提示する場に持っていける人がいなければ、その作品は埋没してしまうかもしれない。例えばある一般人が、キャンバスをサッと切り裂いただけの作品を「これはすごい!」と思ったとする。でも数を見てきて美術史を知っている人間からすれば、そんなの珍しくも何ともない。

いちばん大事なのは作品=作家という視点です。その作家がどんな人物か、過去の作品から進化しているか、新しくチャレンジしているか。何より、環境に合わせて自分を柔軟に変える才能があるか。時代を代弁していてこそ価値がある。例えばチームラボの作品は、リーダーの猪子寿之さんをリスペクトして彼の将来に賭けて買われている。だから世界4大ギャラリーの1つ、ニューヨークのペース・ギャラリーで初日完売なんです。

──難解・複雑なコンセプトを評価する時代はいずれ終わる、とも。

共感力のほうに評価の軸が移り始めています。コンセプトはより難解・複雑であったほうがいいと考える時代があった。けど徐々にアートを作る人が増えアートが民主化されていくと、よりわかりやすいものが理解されやすい。キュレーターやニューヨーク・タイムズの論評が評価を下すような “ミシュラン的”なものより、 アート好きが集まって加点する“食べログ的”な評価が尊重されるようになる。アートの民主化ですね。

売れないけどよい作品という考え方は、時代と資本主義の流れから崩れつつあって、売れない作品=将来的価値が認められない作品、売れる作品こそよい作品という理屈が当然になっていくでしょう。

次ページ今のうちに日本の現代アートを買うべし
ライフの人気記事
トピックボードAD
関連記事
  • 新型コロナ、長期戦の混沌
  • ポストコロナのメガ地経学ーパワー・バランス/世界秩序/文明
  • 岐路に立つ日本の財政
  • CSR企業総覧
トレンドライブラリーAD
人気の動画
レヴォーグ1強に見た和製ワゴンの残念な衰退
レヴォーグ1強に見た和製ワゴンの残念な衰退
ウーバーイーツ配達員の過酷
ウーバーイーツ配達員の過酷
イオン「フジ実質買収」で岡田会長が語った未来図
イオン「フジ実質買収」で岡田会長が語った未来図
飲食業界、失敗する店と成功する店の決定的な差
飲食業界、失敗する店と成功する店の決定的な差
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
トレンドウォッチAD
統合から20年どこでつまずい<br>たのか みずほ 解けない呪縛

みずほ銀行が相次ぐシステム障害で窮地に陥っています。その根底には、3行統合から今に至るまで解決できていない呪縛と宿痾が。本特集ではみずほが抱える問題点をガバナンス面や営業面などから総ざらい。みずほは立ち直ることができるのでしょうか。

東洋経済education×ICT