フラット35「不正利用」した人はどうなるのか 投資用と判断するのは難しいケースも

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住宅ローンを不正利用する場合は、住宅ローン控除も悪用できるため、実際にはマイホームに住んでおらず、不動産投資をしているだけのケースで、住宅ローン控除分の脱税ができることになります。これはかなり悪質ですし、確信犯でしょうから、厳しい処分が科されることになるでしょう。

ほとんどの人が今回のような不正利用はしていないと思いますが、70万件のローンがある中で、1%で7000件、0.1%で700件の不正利用がある計算です。おそらく、今後フラット35の審査や貸し出しにいろいろ制限が出てくるはずです。フラット35は、私も含めてフリーランス、自営業、中小企業経営者のように、住宅ローンを借りることが難しい業種にはとてもありがたい住宅ローンでした。それが今後、いろいろな規制がかかると、会社員や公務員以外は住宅取得が厳しくなる可能性もあります。

フラット35の存在意義が問われかねない

今回の不正利用報道を見て、1つ仮説を立てました。実はフラット35は高所得者の利用が多いという事があります。従来は、高所得者にとっては住宅ローン金利が上がるリスクより、多少金利が高くても全期間固定金利を選択することで、今後一切金利変動リスクを無視できるというメリットがあると考えられていました。

今後調査が進まないと判断できませんが、高所得者層が不動産投資の資金調達手段としてフラット35の不正利用をしていた事例が出てくるかもしれません。そのような事態になった場合は、フラット35の存在意義が問われることになりそうです。

さて、住宅ローンの不正利用が判明した場合、金融機関から住宅ローンの残高一括返済を求められるでしょう。ほとんどの人が住宅ローンの一括返済は不可能でしょうから、自宅を売りに出すことになります。住宅ローンの返済期間中にマイホームを売却する場合、住宅ローン残債>マイホームの売却価格となれば、手元の預貯金を取り崩して差額の住宅ローン返済に充てることになります。もし、手元に資金がなければ、自己破産に類するような経済的な破綻を迎えることになります。

はたして、住宅ローンの不正利用者はどれほどいるのか。金融機関は不正利用を働いた人に対してどのような対応をするのか注目です。もし、あなたが住宅ローンの不正利用をしていたことに気がついたら、すぐにでも金融機関に相談することをお勧めいたします。

FPに相談しても、販売した不動産会社に相談しても、後の祭りで何もできません。不正利用した人に、新たにローンを貸す金融機関がどれほどあるのかわかりません。しかし、何もせずに破綻を待つのではなく、可能性のある金融機関を探してみてはいかがでしょうか。

高橋 成壽 ファイナンシャルプランナー

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たかはし なるひさ / Naruhisa Takahashi

寿FPコンサルティング株式会社代表取締役。慶應義塾大学総合政策学部を卒業後、金融系のキャリアを経てFPとして独立。お金を増やす、お金を守るという視点でFPサービスを提供。30代40代の財産形成、50代60代の資産運用、70代以降の相続対策まで幅広い世代に頼られている。「ライフプランの窓口」を企画運営。著者に『ダンナの遺産を子どもに相続させないで』(廣済堂出版)がある。日本FP協会認定CFP。

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