東京五輪のレガシーは長野の21年の歩みに学べ エムウェーブ維持に苦労もスケート文化醸成

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ビッグハットもコンサートなどに利用されている(筆者撮影)

エムウェーブを管理・運営している第3セクター「㈱エムウェーブ」の田口和男・総務企画部 部長は利用実態を次のように説明する。

「スケート場の運営には、氷を張って、維持するための光熱費が想像以上にかかります。エムウェーブはJOCのナショナルトレーニングセンター(NTC)の指定を受けているので、室温12~13度で、リンク状態を良好に保たなければいけません。10月初旬は30度近い日もあるので冷房を使う必要がありますし、1~2月の零度前後の日も暖房を使います。

そのコスト負担が大きく、夏季のイベント利用のほうが収入は増えます。それでも長野五輪のレガシーやスケート文化を残すことは重要。そういった市やスケート関係者の考えがあり、今も26週間の営業を続けています」

エムウェーブのスケート利用者は2017年度が7万5000人。長野五輪直後の2000年度が11万人だったから、大幅に減ったのは確かだ。少子化や学校単位のスケート教室の回数減もマイナス影響を及ぼしている。

その苦境を打開すべく、長野市では2011年から「ドリームリンク長野」という小学校を対象にしたスケート教室(年10回)をスタート。

日本電産サンキョーが実施しているスケート教室(写真:日本電産サンキョー提供)

底辺拡大とタレント発掘に乗り出した。当初は70~80人の参加者だったが、地元・長野県茅野市出身の女子500mスピードスケートの第一人者・小平奈緒(相澤病院)が2018年ピョンチャン五輪で金メダルを獲得したことが追い風となり、直近2シーズンは150人を超える子どもたちが参加。スケートへの関心が高まっているという。

エムウェーブの存在は重要

さらに「エムウェーブ・スケートクラブ」という強化目的のチームも活動中で、現在は小学1年~高校3年まで約40人が所属。ジュニアワールドカップ参加選手も出てきている。

OBにはワールドカップ参戦中の土屋陸(日本電産サンキョー)、世界ジュニア選手権出場の小山香月(日本電産サンキョー)もいて、徐々に実績を残しつつある。長野県のスケート関係者も「ワールドカップなど主要国際大会を開催できるエムウェーブの存在は重要。この拠点をうまく活用しながら小平奈緒に続くエリート選手を輩出したい」という意識を強めているようだ。

長野県のスケート文化は長年、南信地区の岡谷や諏訪、茅野、東信地区の佐久、あるいは中信地区の松本・塩尻などが中心だったが、現在はワールドカップ等の主要大会が開催される長野市を軸とした北信地区の存在感も高まっている。それも1つの変化といっていい。

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