「べき論」を語る人が孤立しがちな本質的理由

「巻きこめる人」になるための"3つの考え方"

その後は「べき論」を振りかざすのはやめて、「私は皆さんにこの新しいやり方でもっと楽をしてもらいたいと思っているのですが、どうしたらいいでしょうか?」という接し方に変えたところ、自分でも驚くほどの協力を得られるようになりました。

「何をするか(What)」→「なぜやるのか(Why)」

「何をするか」という考え方は人を引きつけるように思われますが、いつもそうとは限りません。やることは、状況の変化とともに変わることも多いからです。自分が「こうしよう!」と掲げたこと=Whatに一時的に協力が集まったとしても、状況が変わるともっとよいWhatに人の心が移って行くことは想像にかたくありませんし、自分自身が試行錯誤し、学んでいくことでWhatが変わることもあるでしょう。

巻き込み力にはブレない芯が必要です。ころころ変わるWhatに協力を仰ぐよりも、ブレない信念に共感してもらうほうが、結果的に強い協力を得ることができます。信念とは「なぜそれをやろうと思っているのか」=Whyのことです。Whyへの共感は強く長く続きますが、人を引きつけるWhyとあまり引きつけないWhyがあります。

ビジネス訓話としてもよく取り上げられる「3人のレンガ職人」というイソップ童話は、このWhyの違いを端的に表しているのでご紹介します。

ある旅人が街を歩いていると、1人の男が道の脇で難しそうな顔をしながらレンガを積んでいました。旅人は、その男のそばに立ち止まって尋ねました。「ここでいったい何をしているのですか?」すると、男はこう答えました。
「レンガ積みに決まっているだろ。雨の日も風の日も、暑い日も寒い日も1日中レンガ積みだ。なんでオレはこんなことを毎日しなければならないんだろう」
旅人は、その男に「大変ですね」と慰めの言葉を残して歩き続けました。
しばらく行くと、一生懸命レンガを積んでいる別の男に出会いました。そこで、また旅人は「ここでいったい何をしているのですか?」と尋ねたところ、男はこう答えました。
「大きな壁をつくっているんだよ。この仕事で私は家族を養ってるんだ。この仕事があるから家族全員が食べていけるのだから、大変だなんて言ったらバチが当たるよ」
旅人は、その男に励ましの言葉を残して歩き続けました。
さらにもう少し歩くと、別の男がイキイキと楽しそうにレンガを積んでいました。旅人は興味深く「ここでいったい何をしているのですか?」と尋ねました。すると男は目を輝かせてこう答えました。
「歴史に残る偉大な大聖堂をつくっているんだ。ここで多くの人が祝福を受け、悲しみを払うんだ。素晴らしいだろう!」
旅人は、その男にお礼の言葉を残して、元気いっぱいに歩き始めました。

1人目にはそもそもWhyがありません。そこにあるのはやらされ感です。やらされ仕事に周囲の人を巻き込むのは難しそうです。

2人目のWhyは「生活費を稼ぎたいから」。これが家族のためでもなく、とにかく稼ぎたいというWhyだった場合にはあまり賛同を得られることはないでしょう。

3人目のWhyは「人を救う建物をつくることで世の中に貢献したいから」です。このWhyは多くの人が賛同するでしょう。結果として応援が集まり、レンガを積む仕事だけではなく、大聖堂を建てる重要な仕事を任されるかもしれません。

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