石油・石炭依存から脱却図る大手108社の本音 脱炭素の動向を独自調査、政府目標に厳しい声

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紙おむつなどのサニタリー製品を生産する愛媛工場では、非化石証書とセットにした電力を調達することで購入電力のCO2排出ゼロを実現した。一連の取り組みにより花王は、国内の生産工場で使用する電力のうち35%弱を再エネ由来に切り替えている。花王は2030年までに全社の使用電力の100%を再エネ化する方針を4月に打ち出した。

パリ協定に準拠した取り組みが標準に

こうした取り組みは何を意味しているのか。花王の柴田学・ESG活動推進部マネジャーは、「CO2の絶対量の削減目標を明らかにしたことと深く関係している」と説明する。

花王は4月22日に新たなESG戦略を発表。そこでは2030年までに達成したい会社のあり方を示すとともに、同社として初めて、CO2の総量削減計画(2030年に2017年比で22%削減)を公表した。これは、パリ協定の「2℃目標」(世界の平均気温の上昇を2℃未満に抑える)に合致する「サイエンス・ベースド・ターゲット」(SBT)の認定取得を視野に入れたものだ。CO2削減目標の設定方法を、従来の省エネを中心にした製品ごとのものから大幅に見直した。

エネルギー効率の高さで定評のある花王だが、今回の方針は脱炭素化のグローバルスタンダードを新たに採用したことを意味する。

背景には、プロクター・アンド・ギャンブルやユニリーバなど、ライバル企業との激烈な競争がある。それら欧米企業が先行してRE100加盟やSBTの認定取得を進めていることも、花王が危機感を高めた一因となっている。

RE100への加盟機運は急速に高まっている。リコーが日本企業として初めて加盟したのが2017年4月。「2050年に再エネ電力100%調達」を公約し、その後、イオンや積水ハウスなどが続いた。そして今回のアンケートでは、主要企業の半数超がRE100に加盟済み、または加盟に前向きであることが判明した。

RE100加盟窓口の日本気候リーダーズ・パートナーシップの松尾雄介エグゼクティブ・ディレクターは、「これまでに100社近くから問い合わせがあった」と話す。本誌アンケートの結果もそうした企業側の再エネへの意識の高まりを反映している。

このほか、「政府に望むことは?」について質問したところ、「脱炭素化を進めるべく、2030年度のエネルギーミックス(電源構成)の政府目標を見直してほしい」と回答した企業が、全体の半数近くに達し、「現在のエネルギー政策を続けてほしい」とした企業の約3倍になった。

このアンケート結果について、「政府がエネルギー政策を抜本的に見直す必要があることは明らかで、多くの企業がそれを実感している」と分析するのは、電力ユーザーの動向に詳しい自然エネルギー財団の石田雅也マネジャーだ。はたして政府は変われるか。

『週刊東洋経済』5月18日号(5月13日発売)の特集は「脱炭素時代に生き残る会社」です。
岡田 広行 東洋経済 解説部コラムニスト

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おかだ ひろゆき / Hiroyuki Okada

1966年10月生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。1990年、東洋経済新報社入社。産業部、『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部、企業情報部などを経て、現在、解説部コラムニスト。電力・ガス業界を担当し、エネルギー・環境問題について執筆するほか、2011年3月の東日本大震災発生以来、被災地の取材も続けている。著書に『被災弱者』(岩波新書)

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福田 淳 東洋経済 記者

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ふくだ じゅん / Jun Fukuda

『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部などを経て編集局記者。

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