日銀と外国人投資家の「深い谷」 年の始め、今年の日本経済を考えてみる

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日本銀行は楽観しすぎていないか?

ただし、若干危惧していることがある。この問題について日本銀行が、筆者以上に楽観視しているように見えることである。少なくとも、今年4月以降に追加金融緩和策が必要になるとは、サラサラ考えていないのではないか。仮にそういう事態に追い込まれるとしても、「4~6月期のGDP速報値が発表されるのは8月中旬だから、それを確認したうえで動けばいいや」式の古い感覚が残っているような気がする。

しかるに市場側、特に外国人投資家の間には、日本に対して一定の期待が出できがっている。ぶっちゃけ、こんな感じである。

「4月に政府が財政で無理するからには、日銀が金融面で何かサポートするだろう」

「安倍と黒田(アベクロ)はそれくらい蜜月であると聞いている」
「だから4月30日の物価展望レポートが出た後には、何か追加策があるに違いない」

「安倍内閣は、われわれが求めるスピード感を理解しているはずだ」

1997年を忘れてはならない

残念ながらこの点において、市場とのコミュニケーションはうまく行っているとは言い難い。市場は「おねだりモード」になっているが、財務省も日本銀行も互いに「ゼロ回答」で事態を切り抜けられると考えているご様子だ。消費税楽観派の筆者でさえ、そいつはチト虫がいいのではないかと思う。お気持ちはわかるけれども、完全主義はときに地獄への扉を開けるとも言う。去年が予想以上にうまく行っただけに、今年はあまり欲張らない方がいいと思いますぞ。

最後は因縁話のご紹介である。1997年当時の橋本政権を支えていたのは、豪腕と称された故梶山静六官房長官であった。晩年の梶山氏は、往時を思い出しては「俺は財務省に騙されていた」としきりに増税を悔やんだのだそうだ。
その「遺言」をいつも傍らで聞いていたのは、梶山氏の愛弟子たる菅義偉氏であった。それが今では、安倍首相を守る官房長官となっている。そして1997年以来の消費税増税に立ち向かう。その心境はいかばかりか。

おそらく、「俺はけっして騙されないぞ」と日々、肝に銘じておられることと推察申し上げる。こういう面では、やはり1997年を忘れてはならないのである。

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