トヨタ、“切り札”新プリウスで挽回なるか 3代目プリウス誕生

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今回注目されるのは価格帯。日本で2月に発売するインサイトは値段を発表していないが、福井威夫社長は「200万円を切る」と公言し、189万円との説もある。対するプリウスは未発表ながら、オプション込みならざっと200万円台後半というところか。モーターよりエンジン主体のホンダのハイブリッド方式は、構造がシンプルゆえにコストがかからない。後発のホンダが低価格でぶつけてくるのは必至だ。

ホンダ幹部によれば、「もうイメージ重視の段階は終わり。ウチは鈴鹿製作所の生産能力増強で、ビジネスベースに乗るようになった」と、あえてこの時期に勝負を懸けた。

ちなみにインサイトのデザインを見ると、プリウスのトライアングルシルエットによく似ている、との声も聞く。リア(後部)の切れ上がった形などは、素人目にもプリウスに近い。ホンダでは「自社の燃料電池車『FCXクラリティ』の形を踏襲しただけ。あくまで空力性能を追求したら、プリウスに似たのかもしれないが…」と反論する。

が、裏返せば、それだけホンダも必死ということ。環境対応では「中大型をディーゼル車、小型をハイブリッド車」とすみ分けるはずが、昨年の材料価格高騰でハイブリッド重視へ方針転換した。今後は「フィット」など量販車もハイブリッド化する。ここで引き下がれば、向こう10年の負けを意味する。

敵はホンダに限らない。デトロイトでは欧米勢も電気自動車を次々披露した。トヨタ自身も、「低コストのハイブリッド車を早く出すべき」(中西孝樹・JPモルガン証券アナリスト)という課題が残っている。

むろん眼前にあるのは、未曾有の自動車不振という現実だ。最強トヨタも今期は営業赤字見込み。この暗闇の先には間違いなく、新次元の競争が待ち構えている。プリウスがそのときも勝者であり続けるべく、トヨタは自らの運命を託した。

大野 和幸 東洋経済 記者

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おおの かずゆき / Kazuyuki Ohno

ITや金融、自動車、エネルギーなどの業界を担当し、関連記事を執筆。相続や年金、介護など高齢化社会に関するテーマでも、広く編集を手掛ける。

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