トヨタ、“切り札”新プリウスで挽回なるか

3代目プリウス誕生

逆境のトヨタ、“切り札”新プリウスで挽回なるか

無数のフラッシュがたかれる中、1台の銀色のクルマが報道陣の背後から、ゆっくりと前方のステージへ向かって動き出した。

米国現地時間の2009年1月12日、ミシガン州デトロイト市で開かれた、デトロイト・モーターショー。この場でトヨタ自動車の新型「プリウス」が、世界で初めて公開された。ガソリンエンジンと電気モーターを併用する初のハイブリッド専用車で、初代から数えて3代目に当たる。

「新プリウスは北米で初年度18万台を販売。2010年にはハイブリッド車全体で40万台売る」(米トヨタ販売のボブ・カーター副社長)。

記者会見場と離れたトヨタのブースでも、同時に、青のプリウスがベールを脱いだ。自動車不況の真っただ中、ショー自体は緊縮ムード一色だったが、トヨタのエリアだけは例年と変わらず、多くの報道陣でごった返していたのである。

燃費とイメージ戦略の妙 2代目“異例”のブレーク

大塚明彦チーフエンジニアは「最も重要な燃費を、今回10%引き上げた。うちシステムの改善で6%、車両の性能向上で4%。完成された水準から1割上げるのは難しいんですよ」と振り返る。生産は堤工場で行われ、5月に発売される計画だ。

08年にトヨタが販売したハイブリッド車は42万9700台。前年比では若干増にとどまった。もっとも、トヨタグループで100万台近く激減したのに比べれば、十二分に健闘した数字だ。ハイブリッド車市場が50万台弱として、8割以上のシェアをトヨタ車が占める。

その中でもプリウスは、国内外で28万6000台を販売(前年比2%増)。日本では25%増で、国内の年間販売ランキング(登録車のみ)第5位と、初のベスト10入りしている。これはモデル末期としては極めて異例のことだろう。昨年9月の値上げ直前には駆け込み需要が殺到し、ガソリン高の続いた夏までは、米国でも供給が足りないほどだった。

なぜプリウスに人気が集まったのか。一つはもちろん、燃費のよさだ。現行の2代目は日本基準(10・15モード)で、1リットル当たり35・5キロメートルと断トツ。世界が温暖化ガス排出に敏感になっていく折、プリウスはハイブリッド車の代名詞として、幅広く認知されていった。法人のエコカー導入の流れにも乗った。出願した特許は3代目だけで1000近い。

そしてもう一つの勝因は、プリウスには“先進性”がある、というイメージ戦略の成功だ。

ハリウッド女優のキャメロン・ディアスがインタビューで、「プリウスには未来感がある」と褒めたように、特に感度の高い層が支持した。「クルマをキーレスにして、スタートボタンにしたのもそう。プリウスにはイメージ買いも大きい」と自動車ジャーナリストの川端由美氏。速度計などのインパネをセンター配置にしたのもプリウスが初めて。デザインも含め、そのスマートさを最大限に演出できたといえる。

1997年10月に開催された初代プリウスの会見。会場となった全日空ホテル・鳳の間では、プリウスがエンジンをかけずに場内を走り、記者たちの度肝を抜いた。本来、室内で催される新車発表会の場合、消防法の関係上、自動車のエンジンをかけることはできない。トヨタはわざとプリウスをEV(電気)モードだけで駆動させて走行し、次世代のクルマを印象づけたのだった。

ただし初代は、環境志向を重視しすぎた分、加速性能などの“走り”を犠牲にした。プリウスが商業的にもブレークしたのは、03年に投入した2代目からだ。電池の小型化で車内空間を広げたほか、環境と走りを両立。翌04年には前年比3倍近く売れた結果、年間販売が初めて10万台に乗り、今や「利益もきちんと出ている」(トヨタ幹部)という。

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