トヨタ、“切り札”新プリウスで挽回なるか 3代目プリウス誕生

拡大
縮小

トヨタが次に狙うのは全車のハイブリッド化

2代目ほど飛躍的でないにせよ、新しい3代目プリウスも随所に工夫を凝らした。背面にはソーラーパネル(京セラ製)を設置。ファンを動かして室内を換気し、真夏でも始動時から冷房が利くようにしている。

排気量は1・5リットルから1・8リットルへと増やしたが、逆に燃費は向上させた。北米モデルでは米国基準(EPAモード)で、1ガロン当たり50マイル。日本モデルは未発表ながら、北米で46マイルから50マイルへ1割上げたことから、1リットル当たり39キロメートル近くまで行ってもおかしくない。

さらに販売面で、プリウスは従来の“聖域”を崩すことにもなりそうだ。3代目はトヨタ車では初めて、「トヨタ店」「トヨペット店」「カローラ店」「ネッツ店」の4チャネルすべてで販売される見込み。今はトヨタ店とトヨペット店でしか扱ってないが、他店からの「プリウスが欲しい」という要望を受け、方針を変える。普及車の多いネッツ店が扱うことには、トヨタ店などからの反発も強い。いずれチャネル統廃合にもつながりかねない決断に、トヨタは大胆に踏み切ろうとしている。

プリウスだけではない。

トヨタは今年中に、ハイブリッド専用車の第2弾「SAI」、家庭用電源で充電する「プラグイン・プリウス」、レクサス「RX」のハイブリッド版、同じくレクサスブランドのハイブリッド専用車「HS」を発売する。さらに10年以降は、より高密度のリチウムイオン電池を積んだ「ハイブリッド・ミニバン」「レクサス・プリウス」も想定。10年代初めには、現在8車種(乗用車)のハイブリッド車に、新たに10車種を加える計画だ。弱点である既存車のハイブリッド版より、強みである専用車の開発をまず優先する公算が高い。

新車スクープで実績のある『ニューモデルマガジンX』の神領貢・編集長はこう指摘する。

「2代目プリウスは44カ国で販売したが、3代目は80カ国まで拡げる。これは『カムリ』『カローラ』に続く、第三のグローバル戦略車にするという意味。ハイブリッド車をそろえ、圧倒的な量を売りたいんでしょう」。通常は食い合いを嫌って避ける“新旧の併行生産・販売”も、ハイブリッド車全体を底上げするためあえて実施。2代目は装備を簡素化し、値下げして売る構えだ。

トヨタでは、10年代早期にハイブリッド車年間販売100万台、という目標を置いた。その先の20年代には、全車種のハイブリッド化も目指す。個性のないクルマが並ぶ市場で、プリウスはトヨタに独走を約束する大事な“切り札”なのだ。

ライバルも次々と追随 「安さ」で出し抜くホンダ

もっとも、トヨタも永遠に勝利が保証されるわけではない。ライバルも続々と追随しているからだ。

その最右翼はやはり、ホンダになるだろう。デトロイトではハイブリッド専用車「インサイト」の量産モデルを初めて公開した。

現在のところホンダは、「シビック・ハイブリッド」しかハイブリッド車を持ち合わせていない。08年の販売は5万7000台。トヨタに大きく水を開けられてしまった。

関連記事
トピックボードAD
自動車最前線の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT