「闇金ウシジマくん」作者が見た平成格差社会 テレクラ、情報商材を通して見えたもの

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――今の話からも真鍋さんが多くの人に取材していることがうかがえます。連載期間中は何人に会ったのでしょうか。1000人くらいですか?

さすがにそこまではいっていないかも。取材は2巻目くらいからきちんとするようになった。

「カウカウファイナンス」で働く従業員の過去も描いた「ホストくん」編では、50人くらいに会った。テレクラで売春する母と家出中の娘が物語の中心となる「テレクラくん」編では、竹の塚(東京・足立区)のテレクラに1日いて40代以上の女性に会い、ラブホテルで話を聞くということをした。

そのとき会った人は歯の抜けている人たちが多かった。幼いときに親が歯磨きをしてあげていたか。虫歯の治療にお金をかけられるか、歯の状態には、育った家庭環境や現在の経済状況が表れる。歯はそういうバロメーターなので、マンガでは意識的に描き分けた。

「裏原宿」の闇の部分を取り上げた

そうやって取材で得た面白い話は、自分の中でキープしていて「あのときの話をここで使おう」と後になって引っ張り出す。「楽園くん」編もその1つだった。

真鍋昌平(まなべ・しょうへい)/1998年に『憂鬱滑り台』で『アフタヌーン』(講談社)四季賞夏のコンテスト四季大賞を受賞。同誌の同年9月号に掲載され、商業誌デビュー。『闇金ウシジマくん』では2010年度に第56回小学館漫画賞一般向け部門を受賞(写真:梅谷秀司)

――「楽園くん」編は、読者モデルを目指していた若者が悪事に手を染めていく話で、1990年代後半から2000年代前半までにアパレル業界で起きた「裏原ブーム」の闇の部分を取り上げました。裏原宿(東京・原宿の南東側)に自分の店を持ちたい若いデザイナーなどに、店舗用の土地を提供する代わり、高い対価を得ていた裏社会の人の存在などが描かれています。

裏原でラーメン屋をやっていた人がいろいろと仕切っていた。本業はグレーというか黒い人ですが。そういう話を聞いて、いつか使おうと。そういうわけでマンガでは時代設定がむちゃくちゃになっているところもある。

――連載期間中には丑嶋の職業である金貸しも大きく変わりました。表の消費者金融は上限金利引き下げや過払い金の返還で業者が激減、裏のヤミ金も多くが特殊詐欺へ移行したと指摘されています。

確かにヤミ金の人たちはオレオレ詐欺などに移っていったが、丑嶋をそういうふうにするのは違うなと思った。『ウシジマくん』では、人の葛藤をそのままに描きたかった。

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