――マンガの「フリーエージェントくん」編に登場した人たちのようですね。時給900円の人材派遣で働き、将来不安に駆られる若者が情報商材(ネットやセミナーを通じて金儲けのノウハウを商品として販売する商法)にのめり込んでいくストーリーでした。
そういうつもりで描いた。でも情報商材の人たちがここまで世の中に浸透して、勢いが続くとは思っていなかった。(情報商材ビジネス界の象徴的存在である)与沢翼さんのように、目立つ形で表に出てくる人たちは減ったかもしれないけど、多くの人が情報商材ビジネスをやっている。
また、情報をうまく捉えることができる人とそれができない人の間での落差が大きくなっている。
「17 Live(イチナナ)」というアプリでライブ動画を配信している女の子と最近会った。イチナナでは、動画を見てくれた人が送る「ギフト」というものを通じて報酬を得ることができる。彼女は普通の大学生だったけれど、動画投稿アプリの「TikTok」(ティックトック)でフォロワーをたくさん作っていたことで、イチナナを始めたら毎月100万円を稼げるようになった。
東洋経済オンラインに連載されている「貧困に喘ぐ女性の現実」を興味深く読んでいる。そこに出てくるような不幸の連鎖の中にあったり、売れなくても風俗・キャバクラで頑張っていたりする女性がいる反面、稼げる情報をうまく捉える女の子がいるのも今の時代だ。
心のバランスがどこか崩壊した女の子
――動画を見てお金を出す人がそれだけいるのも驚きです。
ギフトを送ることで、寂しさや孤独を紛らせようとしている人たちが多くいるということではないか。ただ話を聞いた女の子は、酔っ払うと、ギフトを送ってくれる人たちを馬鹿にして罵倒していた(笑)。それなのにイケメンが「ちょっとおっぱい出してよ」と頼んだら、すぐにブラジャーを外す。彼女を紹介してくれたのがそのイケメンだ。
この女の子は心のバランスがどこか崩壊している。「誰かに承認されたい」という欲求が強くあると話していた。でも水をどれだけ飲んでも、それが海水ならば、のどの渇きは癒やせない。彼女がイチナナで行っているのはそれと同じ。だけど、心が満たされなくても飲み続けるしかないと言っていた。
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