30万円ウォークマンは「社員の遊び」で生まれた ソニー社員はこうやって仕事を作り出す

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――DMP-Z1も、相当音質にこだわっているそうですね 。ボリュームつまみに存在感がありますね。

世界一のボリュームつまみは確かめなくちゃいけないと思い、部品メーカーに電話して、サンプルを購入しました。すごく大きいんですけど、聴いてみたらすごくいい音で。聴いてしまったら変えられないよねとなりました。

――オーディオが好きな方は「電源が大事」とよく言いますが、どうなんでしょう?

高級なステレオは、だいたいデジタル電源とアナログ電源をトランスで分けていますが、この製品はそれを電池でやりたかった。電源担当には複雑すぎて絶対無理と言われていたのですが、無理やりやってもらいました。おかげで音はすごくよくなった。

自分用の電信柱を立てるのは、マニアの方は本当にやっています。お茶にしてもお酒にしても、水がキレイじゃないとおいしくないですよね。その水と同じくらい電源は大切です。DMP-Z1は電池で動くので、評論家のある先生からは「マイ電柱いらず」と言われています。

いい音とは?教えられなくても、なんとなく一致する

――“いい音”とは、簡単に言うと、どういうことなのでしょうか?

何がいい音かというのは、人によって違うと思いますが、やはり自分が好きな音楽を楽しく聴ければいいのではないかと思います。AMラジオで聴いても、いい音楽はいいと感じると思うんですよ。それは芸術性の問題です。ただ、製作者が一生懸命作ったものを、そのままお届けしたいという思いをずっと持っています。

――単にノイズがない音を“いい音”と言っているわけではない?

そうだと思います。確かに、基本的には正しく伝えるという視点に立って対策します。音楽に影響させないために、セットの中で起きるノイズを下げるとか、アンプから出た信号をなるべく劣化させずにジャックに届けるために線を太くするとか、ですね 。

オーディオは何かをすれば、絶対に何かが変わります。実際に聞いて、いい方向になるものを組み合わせていく作業です。

――結局、最後は人間の耳で“いい音”を判断しているんですね。複数人で聴​いたときに、「こっちの音のほうがいいね」という意見は一致するんですか?

おそらく、ソニー全体として底辺に流れているものがあって、仕事をしている間に、なんとなく向いている方向が一緒になるんです。細かいところで意見が分かれることはありますが、大筋では一致します。

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