一流の刑事が「あえて失敗から学ばない」理由 事件を解決すればするほど「勝ち癖」がつく

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しかし、刑事としての能力を開花させることができるかどうかは、その後の努力にかかっています。では、一流の刑事になるためには何が必要なのでしょうか。

私は、「執念」こそが一流の刑事の条件であると考えています。もちろん、犯人を捕まえて事件を解決する執念です。

刑事が仕事のモチベーションとしているものはさまざまです。地域を少しでも平和にしたいという人もいるでしょうし、事件現場で被害者の悲痛な叫びを受け取り、その悔しさや無念を晴らしてやりたい、と思う人もいるでしょう。あるいは、被害者遺族に代わって自分が犯人を逮捕するのだ、と考える人もいます。いずれにせよ、社会や他人のために頑張るということです。

一方で、私が考える「執念」というのは、刑事としての自分自身の生き方を突き詰めていったところで出てくるものです。刑事として、目の前の事件が未解決になってしまうと、自分のプライドはズタズタになり、奈落の底まで落ちてしまう。仕事で手を抜けば楽ができるかもしれないが、そんな弱い自分には負けたくない。他人にも、「お前、刑事のくせに、大したことないな」なんて言われたくない。刑事としての自分を否定されることは耐え難い。こんな気持ちです。

社会のため、被害者のため、というと格好いいのですが、本音を言えば、刑事としての自分自身のためでもあります。刑事としての「生き方」の問題です。だからこそ、どんなことがあっても目の前の事件を解決しようとする。

ただ、自分だけが執念を持っていても事件は解決できません。捜査はチームでやるものですから、同僚や部下とも同じ気持ちを共有し、一丸となって情熱を燃やさなければなりません。

燃えない部下をどう燃やすか

難しいのは、中には全然燃えない刑事がいることです。まるでコンクリートのように、火をつけてもなかなか燃え上がらない。よくいえば冷静でマイペースなのですが、燃えない刑事はチームとうまくかみ合わないので、捜査がうまく進まないことにもつながる。こうなると困ります。

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そんな不燃性の刑事も、刑事任用試験を受けて刑事になるときは、高い志を持っていたはずです。燃えなくなったのには必ず理由があります。

例えば、捜査に失敗し、事件をうまく解決することができなかった。あるいは上司との関係がうまくいかず、煮え湯を飲まされたということもあるでしょう。離婚をして、独りで子どもを育てなければいけない状況にいる、というように、中には家庭の問題を抱えている場合もあります。

捜査指揮官は、そのような刑事一人ひとりの内情も把握しておかなくてはなりません。そして、可能な限り障害を取り除き、心に火をつけ、チームとしての執念を持って、成功体験を積み重ねていくことが大切です。

久保 正行 第62代警視庁捜査第一課長

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くぼ まさゆき / Masayuki Kubo

1949年、北海道十勝管内新得町生まれ。第62代警視庁捜査第一課長。1967年、警視庁に入庁し、1971年、警視庁刑事に。1974年に捜査第一課に異動、以後警視正までの全階級で捜査第一課に在籍。鑑識課検視官、理事官ほか、田園調布署長、第1機動捜査隊隊長、渋谷署長などを経て、2008年3月、警視庁第七方面本部長を最後に退官。現在、日本航空株式会社勤務。新得町観光大使、警察政策学会員、国際警察協会(IPA)員。

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