一流の刑事が「あえて失敗から学ばない」理由 事件を解決すればするほど「勝ち癖」がつく

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現場を見るのがうまい刑事、遺留品の捜索がうまい刑事、聞き込みがうまい刑事、取り調べがうまい刑事……、刑事の得意分野はさまざまです。そこを伸ばしてやるのです。その結果、一課や捜査本部の捜査能力自体も上がる。部下を育てることは、犯人を捕まえることにも直結します。

また、育てるのは一課の刑事だけではありません。警察署の捜査員のうち、優秀な刑事には仕事のやり方を直接、教えていきます。将来的に一課に呼び、仕事をしてもらうためです。リクルートも同時にやっているわけです。

さて、部下を育てるうえで、もっとも重要なことは何でしょうか。多くの偉人たちが、「失敗は成功のもと」、つまり失敗から学べと言います。しかし、こと捜査においては、成功からしか学べません。

育成のコツは「成功から学ぶ」こと

失敗した事件は、どこが失敗なのか分析することができないからです。失敗した事件というのは、犯人を検挙できなかった未解決事件です。捜査の何が正しく、何が間違っていたのかは、犯人が挙がって初めてわかることです。未解決事件の場合、そのままいけば犯人を検挙できるかもしれないし、別の方法を取ったほうがいいのかもしれません。その成否はすべて解決後にわかることです。

つまり、部下を育てるうえでもっとも重要なのは、「成功から学ばせる」ということになります。言い方を換えると、事件を解決するチームであり続けることが大切です。現に刑事の世界では、犯人を検挙できるチームは、次から次へと検挙を続けていきます。それは偶然でも何でもありません。

検挙できるチームは、成功のノウハウを全身で吸収し、さらに難しい事件にも立ち向かえるようになるからです。野球でも、優勝したチームが次のシーズンで続けて優勝することがありますが、そのメカニズムに近いかもしれません。「勝ち癖」というやつです。

勝ち癖をつけると、事件を見る目が変わってきます。「これはちょっとおかしいな」という感覚が研ぎ澄まされてきます。例えば、相手のちょっとした仕草や言葉尻から、「こいつは怪しいんじゃないか」「アリバイがあると言ったけど、本当は違うんじゃないか」といったことが読めるようになってくる。そういった感覚は、刑事の捜査能力の核とも言えるものです。

刑事は、1人で捜査をするわけではありません。とくに、凶悪な殺人事件は、チームが一丸となって捜査に取り組み、全員で巨大なパズルを組み立てるようにして、事件を解決しなければなりません。ここでは、私がどのようにして捜査指揮官としての仕事をしてきたか、詳しく見ていきたいと思います。

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