日興グループ解体の危機、シティの銀証融合計画も頓挫
日本の三大証券の一角、日興グループが“解体”の危機に瀕している。
その震源は、親会社である米金融大手シティグループが、今月16日に発表した組織再編だ。
傘下の各事業を中核と非中核に分割する計画で、本業の銀行業との相乗効果が高い法人向け専業の日興シティグループ証券は、中核部門にとどまった。だが一方で、個人向け(リテール)証券業の日興コーディアル証券は、シティの非中核部門に組み込まれてしまったのだ。
「シティグループのグローバル戦略に十分貢献しておらず、経営を複雑化させる」。同日、シティのピグラム・パンディットCEO(最高経営責任者)は、日興コーディアル証券の位置づけをこのように評し、売却の可能性をにおわせた。
日興はまな板のコイ
「もう、まな板のコイだ」。金融庁幹部が言うように、日興グループに今後の行く末について決定権はない。すべては、親会社シティの意向にかかっている。
そのシティの懐事情は非常に苦しい。2008年10~12月期は最終損益が83億ドル(約7500億円)の赤字。サブプライムローン問題が本格化したのを契機に、07年10~12月期から5四半期連続で積み上がった最終赤字額は、実に285億ドル(約2・5兆円)にも上る。損失拡大はいまだ止まらず底なし沼だ。
シティは13日、傘下のもう一つのリテール証券事業、スミス・バーニーの経営権を、米証券大手モルガン・スタンレーに売却すると表明。それまで「売るつもりはない」(パンディットCEO)と明言していた従来方針を、いともあっさりと覆した。「キャッシュ(現金)を確保するため。シティはすでに自転車操業ということだ」(グループのある関係者)。
日興コーディアル証券についても、米政府の公的支援の下、シティの業況次第で売却圧力が高まる可能性は十分にある。すでに、メガバンクや競合の大手証券など複数の国内金融大手が、買収に関心を寄せている。
日興コーディアル証券がシティの完全子会社となったのは、今から1年前の08年1月。グループにおける役割は、世界第2位の個人金融資産を持つ日本の富裕層を一層開拓することだった。
日本で今年中にも施行される予定の、銀行と証券のファイアウォール(業務上の隔壁)規制の緩和をにらんで、事前に連携を進めていたところだった。
だがシティがリテール証券を非中核と位置づけた今、その構想も道半ばでついえたようだ。
(武政秀明 =週刊東洋経済)
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