対米交渉の実力者を解任、北朝鮮の思惑は何か

「失脚」ではなく、指導部の世代交代も理由

2019年1月18日、北朝鮮の金英哲・朝鮮労働党副委員長(右)から、金正恩委員長の書簡を受け取るアメリカのトランプ大統領(写真:時事通信)

北朝鮮を代表する実力者の一人で、朝鮮労働党政治局員・中央委員会副委員長の金英哲(キム・ヨンチョル)氏が、これまで兼任してきた同党統一戦線部長を解任されたことが4月24日までに明らかになった。

韓国の情報機関である国家情報院は24日の韓国国会で、「金英哲氏が統一戦線部長の役職を外され、新たにチャン・グムチョル氏が部長に昇進した」と明らかにした。金英哲氏は、米朝首脳会談や韓国の文在寅大統領との南北首脳会談にすべて同席。アメリカのドナルド・トランプ大統領と直接面談し、北朝鮮の最高指導者・金正恩朝鮮労働党委員長からの親書を手渡すなど、トップ外交の実務責任者と目されてきた。

韓国情報機関は「失脚」ではないと判断

統一戦線部とは、朝鮮労働党において韓国との関係を調整する機関だ。朝鮮労働党の主要部署の1つであり、時には韓国に対して宣伝や煽動などの工作も行う。ただ、国家情報院は「金副委員長は、党政治局員や国務委員などの党内要職の肩書はそのまま維持しており、失脚したとまでは言えない」と判断している。今後も韓国やアメリカとの交渉の調整役として、在職し続ける可能性も高い。

とはいえ、この人事については2つの点で大きく注目されている。1つはハノイでの会談の責任を取らされたのではないかということ。もう1つは、金正恩委員長が指導部の世代交代を進め、外交交渉の領域でこれまでの軍出身者中心の体制から外交・経済官僚を中心に変革を図っているのではないか、という見方だ。

それぞれ有力な理由も存在する。まず、責任を取らされたのは「米朝が前向きな合意点を見出し、近く経済制裁の解除・緩和もあるのでは」との前評判が高かったにもかかわらず、「合意なし」で終わったためだ。

実は、北朝鮮の国民が今回の結果に強く失望しているとの指摘がある。米朝首脳会談直後の今年3月、平壌など北朝鮮を訪問した外国人の多くが、「平壌空港の職員をはじめ、街中で出会った市民の誰もが米朝首脳会談を話題にした」と口をそろえる。しかも、「なぜ合意できなかったのか、理由を知らないか」と尋ねてくる市民も少なくはなかったという。「直接的には言わないが、米朝首脳会談が終われば、経済制裁が幾分かは解除され、経済活動も好転すると期待していた人が多かった」(中国人ビジネスマン)ようだ。

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