「陰謀論」人気に火を付けたYouTubeの自縄自縛 ありえないトンデモ動画が見続けられる理由

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となれば、厄介な問いが浮上する。ユーチューブに押し寄せる虚偽情報の波に歯止めをかける取り組みは、このプラットフォームの最大のスターのうち何人かに罰を与えることを意味するのか――。

ドーソンの代理人にコメントを求めたが、回答はなかった。

「有害な」虚偽情報の定義が判然としていない

一方、ユーチューブの広報担当者アンドリア・ファビルはこう語った。「当社は先日、グレーゾーンのコンテンツやユーザーに有害なやり方で誤った情報を伝えかねないコンテンツのおすすめ表示を減らすことを開始したと発表しました。これは段階的な変革であり、時間とともに精度を増すことになります」。

ユーチューブ、フェイスブック(同社も現実世界に実害をもたらす可能性がある虚偽情報の一掃を誓っている)などのプラットフォームの問題の一部は、「有害な」虚偽情報とは何か、その定義が判然としない点にある。

9・11テロの公式見解に疑問を呈する動画は、UFOや未確認生物ビッグフットは実在すると主張する動画より危険だと見なす本質的な理由は存在しない。陰謀論動画が有害になるのは、害を与えたときだ。そして被害が出た時点では、多くの場合、プラットフォーム側が対策を取ろうにも遅すぎる。

例えば、2012年にコネティカット州の小学校で起きた銃乱射事件は銃規制派によるヤラセだと、インフォウォーズのジョーンズが主張した一件だ。当初は、あまりにばかげた説だと退けられたが、ジョーンズの支持者が被害児童の保護者への嫌がらせを開始したために、深刻な影響を及ぼすことになった。

ヒラリー・クリントンら民主党関係者が、ワシントンにあるピザ店を児童売春の根城としているという「ピザゲート」事件もあった。右派が唱えたこの陰謀論はユーチューブなどにアップされた動画で拡散。ネット上によくある突飛なデマと片付けられてもおかしくなかったはずが、信じた男がライフル銃を手に問題のピザ店に押し入る事件に発展した。

名誉のために言っておくと、ユーチューブはこれまでにも虚偽情報阻止のためのささやかな取り組みを行っている。2018年には、特定の陰謀論に関する動画にウィキペディア記事へのリンクを表示するようになり、新着ニュースを検索した際に信頼度の高い情報源が優先的に表示されるようにした。

1月下旬のユーチューブの発表を受けて、同社の元ソフトウェアエンジニアであるギヨーム・シャスロはツイッターのスレッドで、おすすめアルゴリズムの変更を「歴史的勝利」と称した。

このアルゴリズムは多くの場合、影響を受けやすいユーザーを狙い撃ちにして別の陰謀論動画に誘導していると、シャスロは指摘。変更によって「大勢がそうした罠にはまることを免れるだろう」とツイートした。

次ページだが、変わるのはどの動画をおすすめるか、という点のみ
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