「陰謀論」人気に火を付けたYouTubeの自縄自縛 ありえないトンデモ動画が見続けられる理由
ドーソン(本名はシェーン・リー・ヨー)は2000万人を超えるチャンネル登録者を擁し、ティーン層に熱烈に支持されている。儲かるユーチューバーになれたのは、その他の才能はともかく、ユーチューブで受けるコンテンツとは何かを理解していたからにほかならない。
つまり、陰謀論こそがそれだった。これまでずっと、ドーソンは簡単に信じ込む無邪気な態度で、いくつもの説を紹介してきた。
陰謀論動画が映すユーチューブの課題
2016年にアップした動画では、アポロ11号による人類初の月面着陸はNASAのヤラセではないかと疑問を呈してみせた(ドーソンによれば「ただの説だけど、証拠はどれも否定的な感じがする」とのこと)。
2017年には、9・11テロはでっちあげという虚偽の説を取り上げた(「ばかげているのはわかっているけど、とりあえずこれらの動画を見てほしい」と、ドーソンは発言)。2018年には、自らの動画の一部で地球平面説に焦点を当て、「それなりに筋が通っている」と結論した。
公正を期すために言えば、ウェブサイト「インフォウォーズ」の運営者で、ヘイトスピーチを理由に2018年にユーチューブをはじめとするSNSから追放されたアレックス・ジョーンズのような党派心に凝り固まった変人とは、ドーソンはまったく違う。彼の動画の大半は陰謀論と無関係で、多くは悪意のないエンターテインメントだ。
それでも、ドーソンの陰謀論動画の人気ぶりは、虚偽情報の一掃に取り組むうえでユーチューブが直面する課題を浮き彫りにしている。
フェイスブックやツイッターで最も知名度が高いインフルエンサーは往々にして、別の分野(政治やテレビ業界やスポーツ界)で有名になった人であり、信頼性に関して別の指標が存在する。だがユーチューブのスターはたいてい、ユーチューブからスターに育った人々だ。
彼らの多くが、ユーチューブは何年もの間、話題性のある言動や根拠のない噂をばらまく行為でオーディエンスを構築するよう促しておきながら、今さら自分たちについてのルールを変更しようとしていると(ある意味では当然ながら)感じている。
悪気があってもなくても、ドーソンの陰謀論動画に含まれているのはまさに、今やユーチューブが制限したいと公言する類いの虚偽情報だ。