アラン:ニューヨークは本当にアンチトランプが多い。でも、これがアメリカのすべてではないです。僕の田舎のペンシルベニアでは、地元の友達はトランプ好きもかなり多いです。いずれにせよ、皆、トランプ登場以降、SNS上で激しく議論する現象があって、本当に面白い。
原田:アメリカ版マイルドヤンキーの若者は、トランプ大統領支持者がそれなりに多いんだね。ちなみに、君の地元の友達はトランプ大統領のどこを支持しているの?
アラン:彼らは“シングルイシューボーター”の人が多いと思います。つまり、トランプのすべてを支持しているわけではなく、トランプの言う妊娠中絶など、何か1つの政策や考えを支持していることが多い。
また、深刻な格差の増大も含め、アメリカ社会が昔に比べていろいろと苦しくなってきているのは事実なので、トランプのような超アウトサイダーが何かこの閉塞感を大きくがらっと変えてくれるんじゃないかと、期待しているタイプの若者もいます。
それから、彼のはっきりモノを言うところが気持ちいいと言っている若者もいます。
アメリカの若者の政治意識が高まっている背景
キャリス:私は共和党支持者の多いミシシッピ出身です。地元の友達が皆トランプが好きなわけではないけど、かと言ってヒラリーにも投票しませんでした。
「ミドル・アメリカン」(東海岸や西海岸やその他の大都市部に住んでいない人々)の中には、家族やある業界の保護や宗教に価値を置く人が多くいますが、そうした人々が大都市部やリベラルな地域の人たちから疎外感を感じていたことが、トランプ登場の原因になったと思います。
エレン:私はアルメニア出身の移民で、2002年にアメリカに来ました。もともとは人権団体で働いていました。2013年にはドイツに住んでいたこともあります。
ドイツ時代、アメリカの前にハンガリー、ドイツ、ポーランドで右と左が分裂していたのを見てきたので、トランプもアメリカをいずれ分裂させることになるだろうと思っています。また、トランプのやっていることは完全に恐怖政治です。
以前、保守的な土地柄のアラバマに住んでいたときは、ほとんどの人が共和党支持者でした。NYに来てみると99%がリベラル派の人たちばかりです。コロンビア大学の学生のほとんどもリベラル。本当にアメリカ全土をひとくくりにするのは難しいと思います。
原田:トランプ大統領が、ニューヨークや主に大都市部の若者たちに本当に好かれていないことがよく感じとれました(笑)。一方で、地方も含め、広大なアメリカをひとくくりにできない難しさもリアルな実感としてわかりました。
超リベラルなニューヨークに住み、アンチトランプである君たちには、本当に大変な時代ですね。でも、「ピンチはチャンス」じゃないけど、アメリカの若者の政治意識が高まっていることはすばらしいことだよね。
日本はトランプ大統領ほど強烈な政治家もいないし、一見アメリカほど厳しい社会問題も少なくて平和に感じられるから、若者の政治意識が高まらず、投票率も上がらないのかもしれません。日本にもアメリカの大都市部の若者におけるトランプ大統領のような「逆縁の菩薩」が登場してくれたほうが、若者の政治意識という観点ではよいのかもしれないね。
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