副業・兼業に立ちはだかる「壁」とは何か 副業の働き方次第で社会保険料負担は異なる

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つまり、副業を持つものの、本業の300万円に対してだけ社会保険料を負担する人は、本業だけで400万円の所得を得る人が支払う社会保険料よりも負担が少なくなる。

このように、税制では所得を合算して公平に課税されるのに対して、社会保険料では働き方によって負担額が変わることがある。

もちろん、現行制度でも、副業の勤め先で社会保険料の支払い義務が生じれば、所得を合算して社会保険料を払うことになっている。しかし、社会保険料の支払い義務は個々の勤め先ごとに判断することになっており、働き方や勤め先によって社会保険料の負担が異なることが起こる。

複雑な社会保険料支払いの仕組み

副業の勤め先で社会保険料の支払い義務が生じる場合、現行制度では、副業の勤め先で手続きするのではなく、本業の勤め先に副業の収入を自ら届け出る形で所得を合算して社会保険料を払うことになっている。実に手間のかかる仕組みである。

それと比べて、所得税の手続きは今でも簡単だ。所得税は、複数の勤め先から給料をもらうと確定申告が必要だが、本業の勤め先に副業の収入を報告する必要はない。それぞれの勤め先から所得をいくら得たか、マイナンバー付きで税務署に届け出ている。確定申告では、パソコンやスマホから国税電子申告・納税システム(e-Tax:イータックス)にアクセスし、稼いだ所得の合計額などを入力すれば手続きは完了する。税務署に行く必要はない。

副業・兼業を推進するにしても、税制と社会保険料の対応や届け出の違いがあるから、そうした手間をなくすことも求められる。そして、副業が認められたときの労働時間の管理を、本人任せにするのではなく、税制や社会保障制度の枠組みを活用しながら、より簡単にできるようにする仕組みづくりも必要であろう。

土居 丈朗 慶應義塾大学 経済学部教授

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どい・たけろう / Takero Doi

1970年生。大阪大学卒業、東京大学大学院博士課程修了。博士(経済学)。東京大学社会科学研究所助手、慶應義塾大学助教授等を経て、2009年4月から現職。行政改革推進会議議員、税制調査会委員、財政制度等審議会委員、国税審議会委員、東京都税制調査会委員等を務める。主著に『地方債改革の経済学』(日本経済新聞出版社。日経・経済図書文化賞、サントリー学芸賞受賞)、『入門財政学』(日本評論社)、『入門公共経済学(第2版)』(日本評論社)等。

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