そこで問われるのは、副業を希望する従業員の労働時間と健康の管理である。あいにく、わが国では副業がまれだったため、従業員個人の労働時間や所得を全体的に管理する仕組みが社会的に用意されていないのが現状だ。従業員が主たる仕事として働く企業は、従たる仕事での労働時間や所得の情報まで把握する仕組みにはなっていない。すると、副業する従業員は、自分で労働時間を管理しなければならない。健康管理も自己責任となる。
しかし、副業といえども本業があることを理由におろそかにはできない。副業で無理すると、過労になったり、健康を害したりすることも起こりうる。
そうした懸念を払拭することも、副業・兼業のさらなる推進のためには必要だ。労働時間の管理を、本人だけの責任にしてしまうと、過労を心配する人は副業をすることに躊躇してしまう。労働時間の管理をうまく自分でできる人だけが、副業をするということになりかねない。
所得税の負担は働き方にかかわらず同じ
副業での過労を心配し、本業だけで年収400万円の人と、労働時間をうまく管理して副業を持つ年収400万円(本業で300万円、副業で100万円)の人で、税と社会保険料の負担はどのように違うのか。
所得税や住民税はマイナンバーで名寄せされるため、1つの企業でも複数の企業でも、合計した年収が同じなら同じ税負担となる。
一方、医療、介護、年金などの社会保険料は、副業をしない人は本業での給料に比例して保険料が徴収される。副業をする人は、副業のやり方次第では副業の勤め先で社会保険料を払う義務が生じない。上記の副業による収入が100万円の人は、所得などの加入要件を満たさないと、社会保険料は払わなくてよいことになる。
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