センター試験の「後釜」に不安が募りすぎる理由

「新テスト」に記述式を導入する意味は何だ?

いずれの発言も、「制度の不備」を「他人のせい」にすり替える論理が共通している。大学入試センターが今、極度に難しいミッションに取り組むハメになってしまっていることに同情はするが、それにしても「それを言っちゃあ、おしまいよ」という話である。

約2000人の学生バイトが記述問題を採点

いったい何がどうなっているのか、整理しよう。今回の制度改革では、「国語」と「数学」については記述式問題も出されることになったのが大きな変更点。

1回目のプレテストにおいて、数学の数式を書かせる問題2問の正答率は2.0%と4.7%、短文を書かせる問題に関しては8.4%だった。2回目にはそれぞれ5.8%、10.9%、3.4%で、正答率の低さは変わらなかった。これでは差がつきにくい。せっかく手間をかけて解答しても間違える確率が大きいのであれば、記述式問題を後回しにするという受験テクニックが横行しかねない。それではなんのための記述式導入か。

一方、国語の80~120字の記述式問題の完全正答率は、1回目のプレテストでは0.7%だったが、2回目には15.1%まで上昇した。解答のために必要な条件を、問題文の中でわかりやすく示したことが功を奏した。しかし条件に一致する文章を作業として作文するだけであるならば、膨大な費用と手間をかけて記述式問題を導入する意味があるのかという疑問が生じる。

また、今回のプレテストでは、採点基準の共有に、予想以上の時間がかかった。理由について、大杉前審議役は「基準の確定が遅れたため、採点者が理解する時間が不十分だった」と説明している。

採点はかねて「専門の業者が行う」ことになっており、今回は通信教育のベネッセが請け負ったが、実際の採点作業をしたのは、約2000人の大学生および大学院生だった。要するに学生アルバイトである。

入試本番では約1万人の体制で採点に臨むと考えられている。公平な採点を実現するためには、採点基準を極限まで明確化し、機械的に作業を行う必要がさらに高まる。

私は、2018年10月に発刊した拙著『受験と進学の新常識』(新潮新書)の中で、某私立中高一貫校校長のコメントを含めて以下のように指摘した。

「記述式の採点は専門の業者が行うというが、いくら専門の業者でも、50万人分の答案を採点できるほど専門の職員がいるとは思えない。実際は大量のアルバイトに採点させることになるのではないか」。結局は素人に機械的に採点させるのなら、記述式問題を出す意味があるのかという、もっともな疑問だ。

図星であったといえる。

素人に機械的に採点させるのであれば、むしろAI(人工知能)に採点させたほうがいいのではないかという話にもなりかねない。巷では「AIにはできないことができる人間を、これからは育てなければいけない」といわれているにもかかわらず、AIに認められる人間かどうかが大学入試合否の基準となり、そのための授業が高校で行われるようになるのだとすれば、大いなる矛盾である。

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