竹中平蔵氏「改革の勢い止めた麻生氏と民主党」 平成でもっとも失われた時代について語ろう
いま「安倍一強」が言われるが、実は政権は、強い反対勢力と戦っているときのほうが安定する。東西冷戦時代のアメリカとソ連もそうだった。反対勢力が崩れると、政権は不安定化し流動化する。平成の終わりはそんな状況に至った。よい与党のためには、よい野党が必要である。
後で知ったことだが、小泉氏はかつて、自民党の若手で唯一、田中角栄を正面切って批判した政治家だったという。ところが、勝つはずのない戦いを挑む非現実的な政治家かと言えばまったく違い、非常に冷徹なリアリストだと思うことが、しばしばあった。だから、「小泉改革」と呼ばれた改革の評価も、できたこともあれば、まったくできなかったこともある、と冷静につかんでいたと思う。
さまざまな問題を一挙には変えられない
直接聞いたわけではないが、首相としては、やるべきことは全力でやり、不良債権処理と郵政民営化は約束どおり実現できた、と思っているはずだ。だが、その郵政民営化も、ぎりぎりのところで衆院解散・総選挙に打って出て、ようやく決まった。
改革途上で、もうこれで大丈夫、この先はうまく改革の方向に進むだろうと一息つける場面は、ほとんどなかっただろう。
選挙で選ばれた政権が世の中を変えるといっても、さまざまな問題を一挙に変えてしまうことはできない。1つの大きな問題を変えるには、まず戦略を練り、実現可能性を探り、法律を準備し、法案を国会に出し、議論のうえで成立させ、軌道に乗せていくプロセスが必要だ。これは1年では無理で、やはり2年かかる。
小泉内閣は、まず経済財政諮問会議で骨太の方針を作って政策と予算が決まるプロセスを変え、並行して不良債権処理、道路公団民営化、郵政民営化を行った。5年5カ月の中では、まずまずよくできた、と考えている。
教育改革、社会保障改革、税制改革をはじめ、着手すらできなかった改革も不十分な改革も少なからずあった。小泉政権のやった改革は不十分だったという批判は甘んじて受けたい、と私は思う。しかし、小泉政権のやった改革がよくなかったという批判は、承服できない。小泉政権以後、平成の改革が頓挫し、長い空白期間ができてしまったことは、かえすがえすも残念でならない。
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