燃え尽きる「いい人」と成功する「いい人」の差 全部オレのモノ?それとも平等・公平重視?
あのリンカーンも希代のギバーだった。選挙ではあろうことか他陣営を応援し、落選することもしばしば。しかし歴史に残るアメリカ大統領になった。
成功するギバーと成功しないギバーの分かれ目は?
世の中には、余裕がないのにボランティア活動に身を捧げる人がいる。その献身は尊いが、中には「他人の幸せの前に自分の幸せを考えようよ」と言いたくなる人もいる。自己犠牲で与え続けるギバーは燃え尽き、なかなか幸せになれないのだ。
成功するギバーは他者に与えるだけではない。他人の視点でモノゴトを見て、全体のパイを大きくすることを考える。自分の利益も同時に考え、ともに勝つウィンウィンを目指す。だから最後には大きく成功する。リンカーンが他陣営を応援したのも、自分の政策を実現しアメリカをよくするためだった。
つまり成功する「いい人」は、「他人の利益と自分の利益を同時にウィンウィンで考え、全体のパイを大きくするギバー」であり、燃え尽きる「いい人」は、「自己犠牲で与え続けるギバー」なのだ。
一方でテイカーは「パイの大きさは変わらない」と考え、勝ち負けにこだわる。「パイを大きくする」という発想に辿り着けないので、独り占めを目指す。中には相手の利益を考えずに自分中心に考え、こう言う人もいる。「これをやると、お互いにウィンウィンですよ」。これはまさにテイカーやマッチャーの発想そのものであり、実はウィンウィンではない。自分の損得しか考えていないからだ 。
配偶者や交際相手がいる人に、相手との関係を維持する全努力のうち、自分の努力が何%か尋ねた調査がある。互いの貢献を正しく評価できれば自分の答えと相手の答えは合計100%になるはずだ。
しかし4組に3組のカップルは合計100%を大幅に超えるという。人は悪気がなくても自分の貢献は過大評価し、他人の貢献は過小評価する。これを行動経済学で「責任のバイアス」という。成功するギバーはこのことを知っている。だからうまくいかないときは自分が責任を負い、うまくいっているときは他の人を褒める。ちなみにジム・コリンズが名著『ビジョナリー・カンパニー2』で紹介した「第5水準のリーダーシップ」も、これと同じ考え方をする。
また、ギバーであることは幸福感にもつながる。24歳以上のアメリカ人2800人の調査では、ボランティア活動の1年後には幸福度や人生の満足度が上がり、うつ病が軽減したという。またボランティア活動をする高齢者は長生きすることも確認されている。
「なるほど、ギバーは得なのか! これからはギバーになろう」と思うかもしれない。しかしギバーが見返りを得るまでの時間は長い。「ギバーとして行動しているのに、見返りがないじゃないか!」と思ったとしたら、それはテイカーやマッチャーの考え方だ。
優れたリーダーはギバーが多い。世の中はますます透明になっている。SNS普及のおかげで、あなたがギバー・テイカー・マッチャーのどのタイプなのか、他人には丸見えである。こんな時代だからこそ、本書の考え方を理解したい。
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